cats 劇団四季 8月から広島公演

浅利慶太氏
 あさり・けいた 33年東京生まれ。慶応大在学中の53年、劇団四季を結成し、日本を代表する劇団に育て上げた。現在は芸術総監督。

浅利慶太 「キャッツ」を語る
人生の喜び伝えたい

 劇団四季の50年の歴史の中で、「キャッツ」は一番重要な役割を果たした演目です。

 私たちが芝居を始めたころ、観客はほとんどゼロの状態でした。上の世代は外国の影響を受けて、自分たちの知的運動として芝居を展開し、観客がどう見るかをあまり考えていませんでした。

 日本には古典芸能に「歌舞伎」があります。「歌、舞、演技」による劇を日本人は好むという確信から、四季はミュージカルに力を入れていきました。創立20年から30年にかけ、観客が増え、経営も安定したが、チケットを売り歩く苦労は相変わらずでした。

 ニューヨークやロンドンでは何年というロングランをやっている。日本は十分な教育、所得水準があるのに、この差は何なのか。

 お客さまを油田の石油に例えれば、かの地では威勢よく噴き上げ、わが国では違う。問題は、ボーリングの深さじゃないか、と考えたんです。

 思い切って投資し、大衆性のある面白い演目に挑む。長期公演のための劇場も建てる。駄目なら劇団がつぶれてもいいという覚悟で勝負をかけた演目が、「キャッツ」(1983年に東京初演)でした。

 「キャッツ」は、作詩のT・S・エリオット、作曲のアンドリュー・ロイド=ウェバーら、才能ある人が才能を傾けてできた作品です。演劇の世界では、時として力以上の仕事ができることがある。「神が宿る」と表現します。「キャッツ」も、英国の演劇界に神が宿って生まれたという感じがします。

 天上に昇る猫を選ぶコンクールの筋立てで、さまざまな猫が歌って、踊って、ドラマを展開します。猫の生きざまを通し、人間の生きざまを伝えています。

 キャストには大変なダンス力と歌唱力、演技力が要求されます。四季のオーディションは、1000人を超える応募者を数十人に絞り、1年に数人しか残さない。選び抜かれた俳優が、縦横無尽に動きます。

 中国人、韓国人もいます。彼らは小さい時から厳しい環境で鍛えられ、身体的能力はずば抜けて高いですよ。

 劇団創立50年、「キャッツ」初演から20年の節目に、広島で公演できるのはありがたい。東京や大阪は機能する街となり、思索する街ではなくなった。21世紀を担う逸材は地方から出ると確信しています。

 これまで全国を巡演してきたのも、「芝居って面白いもんだな」と子どもたちが感じ、優れた演劇人が出てきてくれたらと願うからです。

 四季は作品を通じ、「生きることは素晴らしい」「人生は生きるに値する」というメッセージを常に送っています。四季を代表する「キャッツ」は、もちろんです。

2003.6.17
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