第8回広島県大学フォーラム 〜グローバルな視野で人材育成〜

講演第2部 大学改革の課題

文部科学省高等教育局長
徳永 保氏

得意分野や個性明確に

石川憲一さん

とくなが・たもつ 1952年生まれ。東京大学法学部卒。76年文部省入省。83年三重県教育委員会指導課長、87年文部省大学課課長補佐、91年米国連邦政府国立科学財団(NSF)派遣、94年北九州市教育委員会教育長、96年同企画局長、97年文部省教育助成局地方課長、99年同教育助成局財務課長、2000年同大臣官房会計課長、02年筑波大学事務局長、04年文部科学省大臣官房審議官(高等教育局担当)、06年同研究振興局長を経て、08年より現職。

現在の中央教育審議会の中心課題の1つは、大学教育の内容と水準、そしてそれを証明する学位の授与とがマッチしたシステムをどうつくっていくのかということである。まず各大学が提供する教育の内容について内外に提示する、そしてその教育内容を履修し、成果を得られた学生に対して学位を授与するという、いわゆる品質保証のシステムが大学の健全な発展のために不可欠と考える。これを実現していく観点から検討を進めているのが、学位プログラムと大学制度とのかかわりである。

学位プログラムが柱

現在の大学制度や教育活動は、主に学部や学科といった組織に着目しているが、これを、専門分化した教育課程によって得られる体系的な知識や技術に対し学位を与えるというプログラム(課程)を中心にした視点を重視して質保証していくというアプローチだ。専攻分野の付記などを定めた1991年の学位規則の改正も、この学位プログラム志向に基づくものであったと理解することができよう。

昨今は大学間の国際交流が盛んに行われているが、海外の大学からは日本の学位が何を勉強し、何を身につけたかの実質的な証明になっているかという点が今まで以上に厳しく問われてくる。国際競争力という点でも質保証は重要であり、今後は学位プログラムの質を中心に据えるような見方が進んでくるであろう。

また設置基準・設置認可審査・認証評価による質保証システムについても今後に向けた改善が必要。特に、大学の設置基準はこれまで、大学関係者の共通常識や暗黙知に大きく依存していた。例えば、われわれの共通常識として、大学とは人間形成を目的とした課外活動や学生生活をサポートする諸施設なども含めた空間であろうが、大学設置基準はそのような常識を前提にした規定振りになっているため、キャンパスとして備えるべき具体的な要件などに関する規定は設けられてはいないのが現状だ。

基準の要件を満たしていれば認可する2003年の準則主義への転換に対応して、今一度適用すべき基準の在り方を明確にし、ルールはきちんと明文化することが必要となっている。設置基準、設置認可に関する規制緩和と一対のものとして導入された認証評価についても、不適格となった場合にどの段階、どの基準をクリアしていないのか、よりわかりやすくできないかなど、大学の質保証を支える法的な枠組みをきちんと議論し、整備していくことも求められると考える。

大学間の相互連携を

大学の質保証については、公的なシステムとともに、各大学や大学連合がどう教育内容を高め、自らその質をどう保証していくかが重要だ。教科書をオリジナルで作成する取り組みなどもその一例。大学単独のみならず、大学コンソーシアムの戦略的活動として相互に保証していくような自主・自立的な取り組みが大いに期待される。

先にも触れたように、学位の国際的通用性の確保を含む大学教育の質保証は、今や世界的にも重要視されている、05年にはユネスコとOECD(経済協力開発機構)による「国境を越えて提供される高等教育の質保証に関するガイドライン」が策定され、各国政府がそれぞれに高等教育の質を確保することが承認された。ヨーロッパでは各国での取り組みと併せ、域内外の大学間交流によりヨーロッパの大学の質と競争力を改善する計画などを積極的に推進している。

アジアでは今後どのような試みが求められるのか、わが国としても積極的に貢献していく必要がある。アジア諸国と協力して、システム構築や課題解決への取り組みを進めるとともに、日本としての経験の蓄積を生かした貢献をできるだけ早期に国際的に打ち出していく必要があろう。

大学の量的規模については、大学数や学生数ともにピーク時よりも減少。各国の大学進学率との比較では、日本はまだ高いとはいえない。特に25歳以上の社会人入学者の割合はOECD平均20・6%に対して、2・0%と低く、大学が恒常的に知識技能を身につける場として、多様なニーズに応える教育課程を提供していくことが求められる。

その方策の1つが、大学の機能別分化だと考える。各大学が特色や個性を明確にし、それぞれ強みをもつ分野に重点を置く。さらに大学間のネットワークによる補完関係を築き、大学教育全体として多様で高度な教育を展開していくことが重要だ。本年度は大学間連携を推進する観点から、大学の教育関連施設の共同利用についての制度も創設したので、経営戦略としてそれらを積極的に活用していただきたい。

また私立大学の規模別入学定員の充足率をみると、定員800人以上の大学は充足率100%以上なのに対し、800人未満の大学では軒並みマイナスとなっている。地域別では東京の大学の充足率が高く、地方の中小規模の大学は厳しい現状にある。質の保証の前提である健全な大学経営のために、定員超過の取り扱いの厳正化や定員規模の適正化、さらには教育研究の評価と合わせて、財務・経営に関する情報公開の促進なども今後の検討課題となるだろう。

地域における国立大、公立大、私立大それぞれの存在意義と役割分担をもあらためて確認しながら、大学教育の充実のための改革支援に努めていきたい。