保険料収入が減少 向井さん
負担増が経営圧迫 鈴山さん
年収400万円の場合
| 9.37% | 8.22% | 負担増 | |
|---|---|---|---|
| 事業主負担 | 187,400 | 164,400 | 23,000 |
| 加入者負担 | 187,400 | 164,400 | 23,000 |
※単位は円
―協会けんぽの健康保険料率はどのくらい上がるのでしょうか。
向井 健康保険料率は各都道府県ごとに決められており、広島では4月納付分から現行の8.22%から9.37%に上がります。上げ幅の1.15ポイントは過去最大です。大幅な引き上げの要因にはまず、保険料収入の減少があります。健康保険料は、加入者の給料と賞与に保険料率を掛けて算出されますが、長引く不況の影響から、広島では加入者の賃金が前年と比べ月約1万円減少。年間の保険料収入が協会全体で3800億円も落ち込む見込みとなりました。その一方で、新型インフルエンザの影響により、治療を受ける患者が増え、協会けんぽが支払う医療費は900億円も増加する見通し。後期高齢者医療制度への支援金の支払いなどもあり、2009年度は最終的には約4500億円の赤字が見込まれ、3年連続の赤字決算となります。
鈴山 健康保険料は労使折半のため、保険料率が上がると、従業員だけでなく、企業側の負担も重くなります。その上、今年は介護保険料が約0.3%、雇用保険が0.4%上がり、厚生年金は17年まで毎年約0.35%ずつ上がっていきます。664人の被保険者を抱える当社の場合、保険料は年間で約2000万円、社会保険料全体では3000万円以上の企業負担増になります。税金は赤字なら払わなくて済みますが、社会保険料はどんなに収入が減っても免除されることはありません。負担増が経営を圧迫し、従業員の昇給も難しく、申し訳ない気持ちでいっぱいです。
―広島県の保険料率は全国的に見てどうですか。
向井 全国平均9.34%に比べ、0.03%高いことになります。他の都道府県と比較し、医療費の多さが目立ちます。例えば広島県の協会けんぽの場合、年間1人あたりの医療費は13万円で全国12番目、国民健康保険は34万円で全国で一番高いと聞いております。医療費をどう下げていくかが、保険料率を抑えるための大きな課題といえます。鈴山 このまま保険料率が上がっていくと、雇用に影響が出るのではないか。企業経営者の間ではそんな懸念も広がっています。先に述べた当社の負担増3000万円は従業員8人程度の人件費に当たります。新規採用を控えるばかりか、非正規雇用など、保険料を支払わなくて済む雇用体系に頼らざるを得なくなるかもしれません。
ジェネリック普及を 向井さん
予防健診受診を奨励 鈴山さん
―では、医寮費を適正化し、保険料率を抑制するには、どのような取り組みが必要でしょうか。
向井 最も有力な方策は、新薬と同じ成分でありながら価格が割安な後発医薬品(ジェネリック)の普及促進です。薬価が抑えられる分、利用が広がれば医療費の大幅削減が期待できます。実際に、広島支部では09年7月に通知サービスを実施。ジェネリック医薬品に切り替えた場合に新薬と比べどのくらい安くなるか、差額を明示したところ、1カ月間で1250万円の削減につながりました。個人で見ても、1カ月で1万4000円以上も自己負担額が軽減された方がおられます。
鈴山 ジェネリックの認知度が上がれば、利用はもっと増えるはず。当社でもよく知らないという従業員がいます。海外に比べ、日本は普及が遅れているとも聞きます。
向井 アンケートによると、医師・薬剤師の積極的な勧めがなかった、薬局に在庫がなかったなどの声が聞かれ、ジェネリックが普及しない要因の一部として考えられています。ジェネリック医薬品は新薬と同等の品質を備え、安全性に問題がないことは国が認めています。500品目以上のジェネリックをそろえている薬局もあるので、協会けんぽとしても加入者に、積極的に情報提供をしていきたい。
鈴山 ジェネリックの促進に加え、健康診断や保健指導を積極的に受け、病気を予防することも、医療費の削減に結びつくはずです。当社では8年前から35歳以上の従業員を対象に生活習慣病予防健診の受診を積極的にすすめ、受診率は毎年90%以上で年々上がっています。
向井 広島県の健康診断の受診率は、協会けんぽ加入者が約30%、国保加入者が17~18%とかなり低い。そのため、広島支部では、加入者への生活習慣病予防健診はもちろん、扶養家族への特定健診も一部地域で無料で実施しました。メールマガジンによる健康情報の発信にも力を入れています。
さらに今年はパイロット事業として、ITを活用して、一人一人の健康状態に応じ個別に保健指導が受けられる情報サービスの提供に取り組む予定です。
―それぞれの立場から、今後の課題や要望をお願いします。
鈴山 高齢化社会を迎え医療費をはじめ、健康保険料はどこまで膨らむのか。労使とも景気の動向が不透明なこともあり、不安でなりません。従業員の給料や賞与の額に対して保険料率を決めるのは果たして正しいのでしょうか。たとえば、企業が従業員に対して健康に対する意識を高め、医療費低減につなげた場合、企業努力を反映して保険料率も下げる、というようなことも考えて制度設計を見直す必要もあるのではないでしょうか。向井 広島支部では、効率的な運営を図りながら、保険料率の抑制への取り組みをさらに加速させていきます。そのためには事業者や加入者の方々の理解が何よりも不可欠です。特に企業経営者には、従業員の方々に医療費高騰の問題を知らせ、健康診断の受診をあらためて呼びかけてほしいと思います。従業員の健康を守ることは、企業経営を守ることでもあり、それが地域経済を支える力になります。
―健康保険が抱える問題とその解決のために何をすべきかが、よくわかりました。本日はありがとうございました。
メモ
協会けんぽ 広島支部は約4万4000事業所が加入し、被保険者が約56万人、被扶養者が約44万人と、100万人以上が加入する。全国健康保険協会は、2008年10月に、社会保険庁改革から医療保険部門が独立して発足し、47都道府県にそれぞれ支部を構え、09年9月から都道府県別に保険料率を定めることになった。
ジェネリック医薬品 先発医薬品(新薬)の特許期間が切れた後、同じ有効成分を使って製造した医薬品。多額の開発費がかからないため、一般的には新薬に比べ、薬代として3割以上、中には5割以上安くなるものもある。
協会けんぽ広島支部では、メールマガジンを毎月発行。健康保険の制度改正や健診の情報、各種イベントなど掲載しています。
詳しくは同支部ホームページを。


