中国新聞

 劇団四季のミュージカル「オペラ座の怪人」が十一日、広島市中 区の郵便貯金ホールで開幕した。二カ月にわたるロングラン公演の ため、主役級は数人の俳優が交代で演じる予定だが、いずれも歌唱 力に秀でた実力者ぞろい。主なキャスト三人を紹介する。
(道面雅量)
 

怪人(ファントム)
高井 治
(たかい おさむ)
「作品の正確な解釈の上に、自分らしさを盛り込みたい」と 話す高井治
 

歌への志貫く大学講師

自分の怪人的部分出す

 舞台での「怪演」ぶりを見た後で素顔に触れると、思わず「え っ」と驚いてしまう。悪魔的な美声を張り上げてオペラ座を恐怖に 包む怪人と、きまじめな教師を思わせる風ぼう、語り口とのギャッ プ。

 「よく『意外だ』といわれるが、舞台では、自分の中の怪人的な 部分を限りなく引き出して演じている。どこまで引き出せるかが、 俳優としての勝負どころ」

 一昨年の四季のオーディションで「オペラ座の怪人」の挿入歌を 歌った時から、浅利慶太代表に「いずれ怪人役を」と言われてい た。「キャッツ」などに出演した後、今年四月の仙台公演で怪人役 にデビュー。入団からわずか一年半で大役をつかんだ。

 怪人は、音楽に天才的な才能を持ちながら、容姿への劣等感、愛 されることへの渇望、肥大した自己顕示欲などを持て余す複雑な役 柄だ。「性格描写に要求されるレベルはすごく高い。とにかく作品 を正確に理解することを心掛けて乗り切ってきた」という。

 静岡県出身。小学生のころからクラシック音楽に親しんだのは、 「生家が電器店で、オーディオ機器に不自由しなかったから」と笑 う。音楽科のあった地元高校で声楽を学び、東京芸大声楽科を経て 同大学院修了。大学講師を七年務めたのち、四季に入った。

 入団には、家族の反対もあったという。「安定した職を捨て、実 力だけが頼りの世界に飛び込むのだから。ソプラノ歌手の妻は四季 の大ファンだが、その厳しさをよく知っている分、心配したのでし ょう」。それでも、好きな歌で舞台に立ちたいという思いが勝り、 意志を貫いた。

 仙台公演での怪人役は「自信が全くないまま、周りの先輩の表情 をうかがいながらスタートした」と振り返るが、五十回近い舞台を 踏んだ今では、頼もしい言葉も出てくる。

 「作品の正確な解釈の上に、自分らしさを自然に盛り込みたい。 クラシックをやっている時は美しい声を出せばよかったが、この役 は場面によって美しくない声も必要で、演じていて多彩な面白さが ある」

 故郷静岡のJリーグ清水エスパルスのために、ノリのいい応援歌 をCDに吹き込んだりするちゃめっ気も。つかみどころのない印象 だが、案外、こういう人こそ「怪人」のはまり役なのかもしれな い。

ラウル役 柳瀬大輔
クリスティーヌ役
    五東由衣