▽国保の5万5000世帯が対象
呉市が今夏から、新薬と有効成分は同じで安価な後発(ジェネリック)医薬品情報を国民健康保険の加入者に通知することが十三日、分かった。医療費増大による新たな財政負担を避けるため。後発薬を使えば薬代は平均で三分の一程度に抑えられ、国保を運営する自治体の負担軽減になるという。国などによると、国保での自治体による通知は国内初となる。
新システムは、病名や薬剤情報、診療記録などを記した診療報酬明細書(レセプト)を電子データ化する技術を活用。(1)市がデータを基に処方された医薬品を照合(2)同様の効果を持つ後発薬があれば、削減できる金額などを示した通知書を加入者に送付(3)加入者は薬局で通知書を提示し後発薬への切り替えを求める―という仕組みになる。
市などの試算では、後発薬の価格は種類によって異なるが、新薬の二〜八割程度にとどまる。
呉市が保険者となり自営業者や定年退職者などが対象の国保には、ほぼ半数の約五万五千世帯が加入。加入者から徴収した保険料などと国・県の負担金で賄っていた。しかし、団塊世代の大量退職などで加入者が増え、大幅に医療費が増加。今後は市が一般会計から繰り入れざるを得ない見通しとなった。
後発薬の普及で市は、加入者が支払う薬代の削減に加え、市の歳出を抑制する効果を狙う。
市と医師会、薬剤師会などで準備組織を設置済みで、医師や薬剤師らへのアンケートや、より安心安全な後発薬の調査もした。現在は、医師会と薬剤師会がデータを基に後発薬の選定作業をしている。七月ごろにはシステムが確立し、通知を開始する見通し。
市福祉保健部は「生活習慣病などで長期間薬を使う人ほど効果は大きいく薬代が削減できる。通知を通じて後発薬の利用促進を徹底したい」と強調する。(吉村明)
▽医療費抑制 市にも利点
【解説】国民健康保険を保険者として運営する呉市が、後発医薬品情報を通知する新システムは、医療費増で生活が圧迫された加入者の負担軽減に加え、自治体側にとっても医療費が抑制できる「一石二鳥」の策という。国保で初の試みは、財政難に苦しむ全国の自治体から注目を集め始めた。
なぜ呉市が全国初なのか―。背景には、市が北海道夕張市のような財政再建団体に陥る可能性が出てきたため、財政集中改革宣言をして新年度から健全化策に取り組まざるを得ない状況がある。
団塊世代の大量退職などによる加入者の増大で国保運営の厳しさは増している。このままでは医療費負担が財政を圧迫するのは避けられず、歳出カットの一つとして医療費の抑制は待ったなしだった。
市民にとっても薬代の軽減は朗報で、全国的にも拡大すべきだろう。ただ、命に直接かかわる薬だけに、品質や安全性など後発薬の慎重な選定と、加入者への周知徹底と説明責任がより求められる。市民や行政の双方にとって医療費が減る「特効薬」となるのかどうか、呉市の新システムは試金石ともなる。(吉村明)
●クリック 後発医薬品
先発医薬品(新薬)の特許が切れた後、同じ主成分と効能で別の会社が製造した薬。多額の開発費が掛からないため安価。ジェネリック医薬品とも呼ばれる。厚生労働省は2006年度に医療機関の処方せんの様式を改正。医師が後発薬に変更すべきでないと判断した場合は「変更不可」の欄に署名するが、それ以外は患者が同意すれば後発薬を薬局で受け取ることができる。
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