'98/5/2
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個性貫き唯一の主導権 −デザイン開発 | |
市場調査とバランスも
マツダ・ノースアメリカン・オペレーションズ(MNAO)の設立で、急速にフォード化が進む米国のマツダグループにあって、マツダが唯一、主導権を握る部門がある。ミアータ(日本名ロードスター)のスタイルを生み出したMNAOのデザイン開発センター(カリフォルニア州アーバイン市)である。
「シンプルで、車の性能と外観のイメージにギャップのない形を心掛けました」。スタッフ六人を率い、ミアータをデザインしたエグゼクティブデザイナーのトム・俣野さん(50)は話す。長崎県出身の日本人だが、米国永住権を持ち、一九八三年から米国でマツダ車のデザインを担う。 ミアータは、重さ一トンクラスの軽量オープンカー市場を開拓した先駆けとされる。八九年にデビューし、今年一月にモデルチェンジした。このクラスで世界最高の四十三万台を販売。ドイツのBMWやイタリアのフィアットなども追随し、世界の自動車メーカーに強い影響を与えている。
「だれにも嫌われない車です」。ミアータを説明する俣野さんは、開発力への自信を込める。MNAO設立に伴う合理化で米国人社員の二〇%を解雇し、マツダ出向者の四分の一を帰任させた後も開発スタッフ五十人は減っていない。フォードのウェイン・ブッカー副会長(63)がミアータを「マツダらしい車」と評価するのに加え、マツダ側も日・米・欧三極開発体制を維持したいという利害が一致するためである。 とはいえ、ミアータ開発にも、もちろんフォード流が入り込んでいる。市場調査の結果を基にデザインを決める「クリニック」という手法だ。年に一度、米国東海岸と西海岸で車種や色の人気度について市場調査し、車体の色やシートの色・柄を決める。日本の二代目ロードスターはオレンジ色が主流となっている。が、クリニックで米国人に好まれないと分かり、ミアータはシルバーを主力にしている。 「色の好みなどは、市場データを取り入れる方が間違いは少ない」。開発を担当するMNAO副社長の広瀬裕さん(58)は、クリニックの効果を認める。マツダ本社で開発責任者を務めた輸出用626(日本名カペラ)は、色や装備の面で米国の市場ニーズに合わなかった。苦い経験が、そう言わせる。 一方で広瀬さんは別の見方も隠さない。「626などユーザー層が広い乗用車の開発には、フォード流の手法も有効だが、ミアータのように個性的な車には向かないのではないか」。データに基づく開発だけでは市場を開拓するほどの新しい車は生み出せない、というのだ。マツダ技術陣に共通する思いでもある。
マツダとフォードは二〇〇〇年以降、エンジンやサスペンション(懸架装置)など車台の共通化に踏み切る。開発や生産、部品調達のコスト削減を目的とする。半面、マツダ社内には「独自性が薄れるのではないか」との懸念が強い。だからこそ、デザインが重要だ、とMNAOのマツダスタッフはみる。車台は共通でも、車体でマツダ色を保つ戦略を描くのである。 フォードのデータ主義とマツダの開発力をバランスよく生かす努力が、マツダの新しい個性をつくり出す道でもある。「マツダは、平均点の車をつくっていたのでは生き残れない。さらに創造性豊かな車を生み出していくべきです」と広瀬さんは言った。 |
