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春が近付くと、景色が黄色っぽくぼんやり見えることがありま す。「黄砂(こうさ)」と呼ばれる大気現象です。中国大陸から飛 んで来た細かく黄色い砂が起こします。中国地方では既に、岡山と 島根、鳥取の三県で二月七、八日に観測されました。「春の使者」 ともいわれる黄砂。なぜ、この時期に日本にやって来るのでしょう か。
寒さで砂渇き 偏西風強まる 黄砂の古里は中国北西部といわれています。世界地図を見ると、 茶色に塗られた乾燥地が広がっています。黄河流域のゴビ砂漠や黄 土高原、タクラマカン砂漠などがあり、広さは日本の約四倍。この 一帯にある直径五〜五十ミクロン(一ミクロンは一ミリの千分の 一)のちりのような砂が、黄砂の正体とされています。 「この細かい砂は、冬の間にカラカラに乾きます。寒い時、人の 肌が乾燥するのと同じ」と広島市江波山気象館の妹尾芳幸解説員。 中国大陸から4000キロの旅 ―砂漠広がり観測日急増
乾いた砂は、春になると、中国北西部に多く発生する低気圧の上 昇気流によって空高く巻き上げられます。高さは五千〜一万メート ル。このあたりは偏西風という強い風が西から東に吹いています。 この時期の風速は五〇メートル以上もあり、黄砂は風に乗って日本 へ。東シナ海を超えて、約四千キロの距離を二、三日かけて旅して くるわけです。 妹尾さんは「砂が乾燥し、風が強まるなど、条件がそろう三〜五 月が黄砂の本格的なシーズン」と指摘。夏場、偏西風は風速約二十 五メートルにまで弱まるそうです。日本に飛んで来る黄砂は年間百 万〜三百万トン。降下量は一平方キロ当たり一〜五トンと推定され ています。 実は、最近数年、黄砂の観測日が急激に増えています。広島地方
気象台によると、広島市では昨年三〜五月の三カ月間で計二十八日
と、過去十年間で最多でした。黄砂の古里の中国大陸で、昔は草木
があった土地が牧畜などにより荒れ地になり、砂漠や乾燥地の範囲
が広がっているのが原因、と考えられています。
大気中を漂い、時には洗濯物や車に降り注ぐ黄砂。日本でもやっ かい者ですが、中国では深刻な被害をもたらしています。昨年から 三年計画で黄砂の実態を調べている国立環境研究所(茨城県)の西 川雅高主任研究員は「中国で黄砂は『砂塵暴(さじんぼう)』と呼 ばれ、台風並みの砂あらしとなって街を襲います」。年間の被害額 は、農作物や家畜を中心に七千億円に上るそうです。 「まだ分からないことが多くあります」と西川さんは付け加えま す。例えば、黄砂には二つの側面があるそうです。汚染物質を一緒 に運んでくる「悪玉」と、大気をきれいにしてくれる「善玉」―。 人の健康が心配されるほか、環境問題にもかかわってきます。 汚染物質とは、空中を飛ぶ黄砂に付着する、酸性雨の原因になる 車の排ガスや、火山ガスなどです。年間で車七十万台が出す排ガス の量に相当します。一方で、黄砂は炭酸カルシウムを含み、酸性を 和らげるアルカリ性。環境破壊の一因となる酸性雨を中和する効果 もあるそうです。 「健康への影響は不明ですが、汚染物質が、どの地点で付くのか を調べるのは課題」と西川さん。単なる季節の現象としてとらえ ず、黄砂が太陽の光を邪魔したり、地球温暖化にもかかわったりす るのでは、と広い視野で考えています。 黄砂の調査や研究は始まったばかり。環境省も新年度から、日本
国内の観測所で飛来ルートの分析などに乗り出します。
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