福田康夫元官房長官が、九月の自民党総裁選への立候補を見送る意向を表明した。「ポスト小泉」レースは、安倍晋三官房長官の独走の見方が強まってきた。国民の興味をそぐ「消化試合」のような選挙戦にしてはなるまい。
福田氏は「立候補すると言ったことはない」というが、安倍氏への対抗軸として、周囲の期待を知らなかったわけではないだろう。見送りの理由とした七十歳という年齢は、首相の激務を考えれば分からなくもない。ただ、父親の福田赳夫元首相が就任したのは七十一歳の時だ。安倍氏とともに所属する、党内最大派閥の森派の分裂を避けたとの憶測もある。
問題はもう一つの理由である。「靖国参拝問題やアジア外交が争点になれば、国論を二分する事態となる。それは避けるべきだ」との判断があったという。この選択には、疑問が残る。
先日、亡き昭和天皇が靖国神社へのA級戦犯合祀(ごうし)を嫌い、戦後も続けてきた参拝を中止したいきさつが、側近のメモで明らかになったばかりだ。「ポスト小泉」政権を担う自民党の後継総裁が、どんな歴史認識や外交理念を持っているか、靖国参拝をどうするかは、国民が一番知りたい点である。
安倍氏は、最近刊行した著書の中で「一国の指導者が、国のために殉じた人々に対し、尊崇の念を表するのはどこの国でも行う行為だ」と靖国参拝への持論を展開しているが、首相になった場合の参拝については明らかにしていない。対中関係も「政経分離」の原則を強調する一方、首脳対話の必要性も説き、あいまいだ。
福田氏はむしろ総裁選に出て、安倍氏との論戦を通じ、今後の日本のあるべき外交を明確にさせた方がベターだったのではないか。
総裁選へ立候補の意向を示しているのは、ほかに麻生太郎外相、谷垣禎一財務相がいる。だが福田氏と比べると世論調査での支持率はいまひとつ。選挙を二カ月後に控え、安倍氏独走にならぬよう、どう工夫して論戦を盛り上げるか。与謝野馨経済財政担当相や、額賀福志郎防衛庁長官、山崎拓前副総裁らの対応も注目される。
総裁選は一政党にとどまらず、今後の日本のリーダーを決める選挙だ。小泉改革で出てきた格差社会のひずみ是正や、社会保障をどう永続可能にするかなど、課題は多い。小泉政治と違う独自性は何か、政権ビジョンの論戦を国民に見える形で展開してほしい。
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