核兵器開発に転用可能な「三次元測定機」を、大手精密測定機器メーカー「ミツトヨ」(川崎市)が無許可でマレーシアに輸出した事件が明るみに出た。同社社長の手塚和作容疑者(67)ら五人がきのう、警視庁に外為法違反(無許可輸出)の疑いで逮捕された。
不正に輸出された測定機は「核の闇市場」を経て大量破壊兵器保有が懸念されていたリビアへ渡っていた。さらに国際社会の制止を無視してウラン濃縮を進めるイランにも、別種の精密測定機器を不正輸出した疑いも浮上した。
日本の誇るモノづくり技術が中東の核拡散に一役買っていたとすれば、許すことはできない。核廃絶の先頭に立つべき被爆国・日本の信頼が失われないかと心配だ。
同社は二〇〇一年、軍事転用が可能なため外為法の輸出貿易管理令で規制されている高精度の三次元測定機二台を、無許可でマレーシアに輸出したとされる。税関への申請書類に本来の性能より低い数値を記載し通り抜けていた。
不正輸出されたうちの一台が、国際原子力機関の核査察により、リビアの核兵器研究施設で発見されたのが捜査の端緒だった。これだけでも衝撃的だが、会社ぐるみで複数国へ不正輸出を繰り返していた可能性もあるという。事実なら武器商人を思わせるような企業体質である。
精密測定機器を一九九七年、イランの核開発関連企業に不正輸出していた疑いも強まった。イランは九〇年代前半、小規模のウラン転換実験に成功し、九七年からウラン濃縮を始めた。不正輸出の製品がかかわった疑いはぬぐい切れない。ミツトヨ側は国際社会への深刻な影響をどこまで認識していたのか。解明が待たれる。
核兵器に限らず、通常の武器などに軍事転用が可能な民生品は多い。核や化学・生物兵器、ミサイルなどに転用可能な製品の輸出は、輸出貿易管理令により厳しく規制されている。国際社会が話し合うなどして決めたものだ。
日本の製品は精度が高いだけに、兵器に転用される恐れも大きい。生物兵器製造に転用可能な凍結乾燥機を無許可で北朝鮮に輸出したとして貿易会社の元社長が逮捕されたのは、ごく最近だ。
意図的な不正はもってのほかだが、企業側にも最大限の警戒心が求められる。政府の啓発活動も強化したい。テロリストの暗躍や核拡散の懸念が強まっている。国を挙げての努力が欠かせない。
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