|
フリーターが「気ままな若者」の時代は去った。アルバイト、パート、派遣労働の非正社員が膨張し、貧困層を形作りつつある。
「昔は皆貧乏だった」。そんな反論が聞こえてきそうだ。だが今深刻なのは、希望が持てないことではないか。働き方の問題が少子化、犯罪など社会のひずみの底に横たわる。
▽働けど働けど…
帰宅後、派遣会社から「明日からもういい」と電話があり、一年近く働いた職場の仲間にお別れも言えなかった。一回り年下の正社員にののしられた…。非正社員が就職支援窓口で漏らした言葉だ。
働く人の三分の一が非正社員という。パートは約千二百六十万人。十五年で75%増えた。派遣労働者は二百五十五万人で過去最多である。
年収は二百万円前後。それで食べて、家族を養わなければならない人もいる。必死で働いても、生活保護世帯よりも収入が少ない「ワーキングプア」も増えている。
問題はここから抜け出すのが相当難しいことだ。職業訓練の機会がない。いつ解雇されるかわからないから、声は上げにくい。非正社員の子は、教育費が十分賄えないため非正社員になるしかない―との悲観的な見方もある。
固定化から再生産へ。弱者へしわよせが集中する構図は、学校でのいじめや虐待と重なり合う。
景気回復に伴い、フリーターは二十四歳以下だけが減った。就職氷河期を経験した二十五―三十四歳は横ばいのままで、百万人弱が正社員にはなれずにいる。一年先が知れない身に、結婚は現実的でなかろう。少子化の一因である。
▽正社員もつらい
では正社員は安泰だろうか。人員を最小限に絞った職場で長時間労働は常態化。残業代の不払いに対する労働局の指導、勧告は島根以外の中国四県で過去最多に上る。
これでは男性の家事参加は望めない。結婚しても産まない、二人目を望まない理由はここにもある。
企業は若手に「即戦力」を期待する。十分な研修もなしに、性急に成果を求める。彼らがつまずいても、気持ちの分かる年の近い先輩がいない。不況に採用を手控えたからだ。
壁を越えられずに会社を辞めると、再就職は非正規雇用。「そんな経験を二度繰り返すと、自信を失いニートになる例が多い」。若者向けハローワークの職員の実感だ。
人件費抑制は、長引く不況とグローバル化の中、企業が生き残る策だった。規制緩和と市場原理重視の小泉路線で加速した。
株主第一の経営が今風とされ、日本的家族経営は弊害ばかり強調された。労働組合も自らの雇用を守るため経営側と協調した。組織率は20%を切り、今や少数派になった。
▽「損して得取れ」
徹底した効率化で企業は競争力を取り戻した。消費者は価格やサービスでその恩恵を受けている。
しかし相次ぐ企業の不祥事は、人間を大事にしない証左といえないか。業績に直接反映しない安心、安全への投資を軽視した結果である。
「いざなぎ」超え景気といいながら、経営者も実感がないという。賃金を抑え、消費が伸びないからだ。
私たちは目先の利益にとらわれ、結局損をしているのではないか。
経営者はまず、非正規雇用も含め自社の従業員に手厚くしてはどうか。仕事や会社への愛着がないと、チームワークも魅力ある製品やサービスも生み出せまい。消費者も激安や便利のからくりに目を凝らそう。
市場の失敗を修正し、行きすぎを和らげるのは政治の仕事だ。安倍政権は再チャレンジ支援で、パートの待遇改善やフリーターの再就職支援を掲げる。しかし企業に及び腰で、実効性には疑問が多い。
まじめに働けば、子どもを育て、税金も保険料も年金も払ってまあまあの暮らしができる。そんな社会の方が豊かではないか。社会全体のコストが一時的に増えても、「損して得取れ」の精神でいきたい。
|