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靖国神社に供物 総理大臣名で私人とは '07/5/9

 サカキの鉢植えにつけられた木札には「内閣総理大臣 安倍晋三」と書かれていた。五万円の「真榊(まさかき)」料はポケットマネーで支払ったといっても、これで私人の立場だと言えるのか。

 安倍首相が四月二十一―二十三日に行われた靖国神社の春季例大祭に、供え物を奉納していたことが明らかになった。首相による奉納は中曽根康弘元首相以来、二十二年ぶりだ。首相の参拝を求める神社側や自民党内の参拝支持勢力に対し、一定の配慮を示す狙いもあったとみられる。

 外相や自民党幹事長ら政府与党は「私人としての事柄なので問題はない」と外交への影響を否定する。だが、韓国政府は「非常に遺憾」と批判。中国政府も「重大かつ微妙な政治的問題」と指摘し、慎重な対応を求めた。またあつれきを生じてしまった。

 日中関係は、小泉純一郎前首相の時代に「敵対関係」といわれるほど悪化していた。昨年十月の安倍首相の訪中で小泉政権以前の関係に戻った。そして、中国の温家宝首相が今年四月に来日。首脳会談でも日中対立のトゲ「靖国神社」には触れなかった。「戦略的互恵関係」をキーワードに、未来志向で対立を避けた。

 この「友好関係」はお互いの演出が目立つ。対立や傷口を表面化させない「薄氷を踏む」ような状態といってもよい。歴史認識に限らず、東シナ海のガス田開発など先送りされた懸案も多い。

 日中関係は単なる二国間関係にとどまらない。経済関係、環境、エネルギー問題、北朝鮮の核開発や台湾問題など東アジアの将来にかかわってくる。対立、論争はあっても、信頼関係を回復するには首脳会談を重ねる必要がある。

 安倍首相は官房長官当時の昨年四月、春季例大祭直前にひそかに参拝している。首相になってからは「外交問題、政治問題になっている以上、行く、行かないということは言うべきではない」と明言を避け続けている。

 しかし、いつまでもあいまいなままでは済まないだろう。私人の思想、信条をとやかくいうつもりはない。首相が「国のために戦った方々のご冥福をお祈りし、尊崇の念を表する思いは持ち続けたい」というのも分かる。ただ、一国の首相ともなると「個人の心情の問題」では片付けられない。信頼回復の一歩を踏み出したばかりの日中関係を、靖国参拝問題で損なっては元のもくあみである。




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