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スパイ映画「007は二度死ぬ」にも登場する情報機関の公安調査庁。そのトップだった緒方重威容疑者(73)が、在日本朝鮮人総連合会(朝鮮総連)中央本部の売買をめぐる詐欺事件の「首謀者」だった疑いで、逮捕されたのだから驚きである。
当初は、本部建物への強制執行回避が目的の仮装売買とみて、強制捜査に乗り出した東京地検特捜部。電磁的公正証書原本不実記録・同供用の容疑ではなく、詐欺罪に切り替える形になった。
もともと朝鮮総連は、破たんした在日朝鮮人系信用組合に絡む不良債権の実質的な融資先として、整理回収機構から六百二十七億円の返済を求められていた。本部建物は、民事訴訟に基づく強制執行で差し押さえられる恐れがあった。その判決の直前、建物所有権の移転登記が行われていた。契約先の会社社長として名前が浮かび上がったのが、緒方容疑者だった。
拉致事件への関与も疑われ、情報を探る相手である朝鮮総連と公安調査庁の元長官。本来は水と油の関係が、実は裏でつながっていたのかもしれない。そんな「疑惑の構図」も描き出された。
緒方容疑者は「北朝鮮の大使館的施設を守りたい。差し押さえ回避は国益にもかなう」と主張。仲介役とされた元不動産会社社長の満井忠男容疑者(73)との関係を問われると「乗せられたかもしれない」と語り、自分は被害者と言わんばかりだった。
ところが調べによると「大義」は虚構だったようだ。緒方容疑者らは、総連が売却先を探していたのに乗じ、本部の土地・建物を詐取しようと共謀。三十五億円の購入代金を支払う意思がないのに「投資する金主が確実にいる」と売買契約を結び、だまし取ったとみられている。これに対し緒方、満井両容疑者は否認している。
緒方容疑者は、東京地検検事からスタート、公安調査庁で朝鮮総連などを調査する部長などを歴任し、広島高検の検事長も務めた大物だ。「社会正義の実現」を部下に説いたこともあった。それだけに検察への信頼は、根底から揺らぎかねない。
なぜ、このような犯罪に手を染めたのだろうか。総連側から損害保証金の名目で約四億八千万円が満井容疑者に渡り、同時期に緒方容疑者も一億円受け取った疑いも浮かんでいる。なお謎の部分が多い事件だけに、徹底的に真相を解明したい。
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