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先行していたと思っていたら、雲行きがおかしくなってきた。再生医療の切り札として注目される万能細胞「人工多能性幹細胞(iPS細胞)」である。複数の国が特許出願している可能性が明らかになった。
京都大の山中伸弥教授らが人の皮膚を使って作製に成功したと発表したのは、昨年十一月。七月に特許出願もしていた。ところがドイツ系のバイエル薬品も成功を発表。出願は昨年春ごろとされる。米国からの出願もあるようだ。
内容が同じなら、基本的に先に出願した方が権利を得る。しかし、さまざまな医療応用が可能な万能細胞の開発である。一社だけがその後の研究や商品化についての権利を独占することは好ましくない。
元の細胞がいろんな組織に成長するのが万能細胞だ。例えば、心臓や神経を形作る細胞集団にもなる。だから、病気などで傷んだ組織や臓器を修復する夢の細胞として、各国がこぞって実用化を目指している。
先に研究が進んだ胚(はい)性幹細胞(ES細胞)は受精卵を材料にするため、生命倫理の面で根強い反対があった。ところがiPS細胞は体細胞を基にし、患者から作れば拒絶反応のない利点もある。
京都大の成功を受け、政府はいち早く研究費増額を打ち出した。五年間で百億円を投じる大がかりな戦略。研究者連携の組織づくりも進め、京都大のほか東京大、慶応大などでも研究が始まっている。国を挙げた支援態勢だ。
一方、世界の取り組みも急ピッチで進む。山中教授はそうした状況も予測。先駆けてマウスのiPS細胞づくりを成功させた際に、他の動物にも共通する基本部分は特許出願で押さえてあるという。
しかし、もし外国企業が特許権を得たら、との不安はぬぐえない。新薬などで高額なライセンス料が必要となれば、医療費もはね上がろう。万能細胞が使いやすく実用化されれば、筋肉が萎縮(いしゅく)する難病など再生治療への応用が期待されるだけに心配だ。
特許制度は発明者を守る仕組みでもある。しかし、人類の財産になるかもしれない研究成果については、基礎的部分を国際的に共有する仕組みやルール作りができないか。iPS細胞実用化には今後さらに十年かかるとも言われる。各国の研究者が協力しやすくなる道をつけたい。
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