|
一日も早く対話を再開して、平和的に問題を解決してほしい。チベットの人たちの切実な願いだろう。
中国政府はおととい、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ十四世の私的代表と、約十カ月ぶりに協議する意向を明らかにした。
チベット亡命政府の当局者はいち早く「歓迎する」と応じた。日米両政府も期待感を表明している。双方の対話は昨年七月以来途絶えていただけに、やっと再開に向けた第一歩を踏み出したことは前進といえる。
この間、中国政府は高度の自治を求めるダライ・ラマを、「独立を求める分裂主義者」と断じて非難。チベット自治区などでの人権問題や暴動鎮圧に対し、対話を求める国際世論に背を向ける形で、強硬な姿勢を取り続けてきた。
ところが、ここに来てブラウン英首相をはじめ欧州各国首脳の間で、五輪開会式に不参加を表明する動きが拡大。今月に入ると、世界各地で始まった聖火リレーでも、チベット支援者らによる妨害が相次いだ。
威信をかけた北京五輪の開幕まで百日余り。悪影響が懸念される事態に、中国側が一定の譲歩を余儀なくされたとしても不思議はあるまい。
しかし、今回の発表が直ちに実質的な対話の進展につながるとみるのは早計のようだ。
具体的な日程を明らかにしていないことに加え、ダライ・ラマ側に条件を付けているからだ。「祖国分裂や暴力扇動」と「北京五輪の妨害・破壊活動」を停止した上で、「本格的協議の基礎をつくる」としている。「暴力行為も妨害も行っていない」としているダライ・ラマ側と、どこまでかみ合うだろうか。
無視できないのが中国国内での愛国心の高まりだ。パリでの聖火リレー混乱で、フランス系スーパーの不買運動が起きている。ダライ・ラマ側の出方次第では、さらに反発を招きかねない。中国指導部にとっては試金石となろう。
きのう、三千人が警備する中で行われた長野市内の聖火リレーでは、逮捕者六人と負傷者四人を出した。中国側は「成功」と報じたようだが、問題の根深さをあらためて見せつける形になった。
対話表明を単なる五輪向けのポーズに終わらせないためには、国際社会の粘り強い後押しが欠かせない。来月六日に胡錦濤国家主席を迎える日本も、大きな役割があるはずだ。
|