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短期間で投資したカネが何倍にもなることは通常考えられない。それでも甘いもうけ話にだまされる人が後を絶たない。
今度はエビ養殖が名目だ。投資会社ワールドオーシャンファームは「フィリピンでエビ養殖事業に投資すれば一年で倍になる」と配当金を約束。広島、長野、愛知、兵庫、沖縄の五県を中心に、二年間で全国約三万五千人から約八百五十億円を集めたとされる。このうち約七百四十億円は出資者に還元されていたが、残る百億円を超える投資金が使途不明という。
警視庁などの合同捜査本部は、組織犯罪処罰法違反(組織的詐欺)容疑でワールド社の黒岩勇会長ら十八人を逮捕した。巨額詐欺商法の全容解明を急ぎ、犯罪収益金の回収に全力を挙げてほしい。
この事件では、十四都府県で被害弁護団が結成され、計約八千人から被害対策の依頼を受けている。中には、約一億二千万円の損害を受けた人もいるという。被害にあった人はすぐに弁護団へ相談しよう。
ワールド社は「フィリピンに東京ドーム四百五十個分(約二千ヘクタール)の広さの養殖場がある。絶対にもうかる」などと宣伝していた。だが、実際には三十二分の一の約六十五ヘクタールしかなく、捕れたのはわずかの量の魚だけだった。集めた金の大半を出資者への配当に回す、典型的なマルチ商法だ。
このほか、同社がエビ養殖事業とともに「リスクがなく高収入」として投資名目にしていた不動産事業も実体がなく、所有不動産はマンションの一室だったことも判明している。また、同社が出資者への配当を停止する直前に、期間限定キャンペーンと称して集中的に資金集めもしていた。黒岩容疑者らは、事業が成功しているように見せ掛け、用意周到に会員を集めていたことがうかがえる。
使途不明金のうち、これまでに黒岩容疑者の実家の墓などから約七億円が押収されたほか、米国の銀行口座に送金された四十八億円が、米連邦捜査局(FBI)によって凍結されている。香港にも二十六億円送金されたという。
合同捜査本部は、海外への送金が投資金をマネーロンダリング(資金洗浄)しようとしていた犯罪収益の隠匿とみて捜査している。資金の海外流出先を調べるためにも、外国の捜査機関と協力態勢を築いていく必要があろう。
黒岩容疑者は一九九九年に健康食品会社を設立、「一年で倍になる」との触れ込みで全国の会員から四百億円を集めたとされる。その会社は二〇〇二年に配当の支払いを停止して破たんした。詐欺商法の「常習犯」をチェックする方法はなかったのだろうか。
悪質なマルチ商法で利益を受けるのは一部の初期投資者に限られ、大半は元金を回収できない仕組みになっている。低金利時代、資金をうまく運用したいと考えている人は多い。悪質商法の業者はそこにつけ込んでくる。「うまい話」には落とし穴があるのでは、と「まゆにつば」をしてみよう。
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