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二十歳代から冤罪(えんざい)を訴え続けて四十一年。強盗殺人罪で無期懲役になり、仮出所した元被告二人の叫びが、やっと届いた。
茨城県利根町布川で男性が殺害され現金が奪われた「布川事件」で東京高裁は、再審開始を認める決定をした。門野博裁判長は、目撃証言と自白の信用性に重大な疑問があると判断した。自白偏重の捜査にあらためて警鐘を鳴らし、再審の厚い壁に風穴をあけるものとして評価したい。
検察側は地裁と高裁で主張を退けられた。重大な疑問が投げ掛けられた以上、最高裁へ特別抗告せずに、速やかに再審の裁判を始めるべきだ。
この事件は一九六七年に起きた。別の事件で逮捕された二十歳と二十一歳の青年が犯行を自白。取調室では「認めないと死刑もある」と追及されたという。二人は公判で無罪を主張したが、七八年に最高裁で有罪が確定し、九六年に仮釈放されるまで服役した。
二人が無実を訴えた第二次再審請求で、水戸地裁土浦支部は二〇〇五年、再審開始を決定した。確定判決では殺害方法について自白通り、手で首を絞めたと認定している。しかし、弁護側が「下着で絞殺した可能性が強い」など自白と矛盾する鑑定を新たな証拠として提出。地裁支部は「自白の信用性に多大な疑問が生じた」と述べた。これを不服として検察側は即時抗告していた。
高裁では、殺害方法をめぐる事実調べで、弁護側の新証拠を認める判断を下した。目撃証言については「薄暗い時間帯の一瞬のことで、人物を見誤る可能性がある」と指摘。検察側が証拠として提出した自白の録音テープについても、録音中断などの痕跡が見られるとして「取調官の誘導をうかがわせる」と疑問を呈している。これらによって、有罪の根拠は大きく揺らいでしまったといえる。
裁判所にとって一度確定した判決が覆されると、司法の信頼性を損なうと思うかもしれない。だが、疑問点の多い裁判の審理をやり直すのにちゅうちょすることはない。再審の制度を積極的に使って調べ直すことが、むしろ裁判に対する国民の信頼を高めることになるのではないか。
現在、司法改革が進められている。市民感覚を生かした分かりやすい裁判を目指し、一般の市民が参加する裁判員制度が来年五月からスタートする。きょうから全国の各地裁で裁判員候補者の名簿作りも始まる。
その裁判員制度で判断の重要なポイントになるのが自白調書の信用性である。自白偏重が多くの冤罪を招いてきたことは明らかである。冤罪の根を絶つためには、取り調べ全過程の録画・録音を認めることが不可欠であろう。
再審への厳しい道を大きく開いたのは、七五年の最高裁「白鳥決定」である。「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の鉄則を適用したものだ。今回の高裁決定は、その白鳥決定に沿った判断といえる。
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