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「後は党総裁選を華々しくやってください」。福田康夫首相は一日夕、自民党の麻生太郎幹事長に辞意を伝えた後、そう頼んだという。一年足らずで総理が再び政権を投げ出すことによるマイナスを、総裁選という「劇場」の効果で帳消しに…。そんな思惑は甘すぎるのではなかろうか。
福田首相の辞任会見での説明で、決定的に欠けていたことがある。自らが打ち出した政策を実現していく強固な意志だ。国民目線の改革を唱えながら、「方向性は打ち出せた」と退陣するのは無責任である。一国のトップに求められるのは、国のあるべき針路を示し、それを実現するための政策を実行に移す力のはずだ。
十日の告示を前に、自民党総裁選の候補者擁立の動きが本格化している。麻生氏が立候補を表明し、小池百合子元防衛相を推す動きも目立つ。「三人以上の選挙戦が望ましい」との声もある。両氏に若手も加われば、まずは華やかな顔ぶれと言えるだろう。
二十二日に決まる新総裁は、三代続けて有権者の審判を受けずに首相となる。速やかに国民の信を問うのが常道であり、選挙管理内閣の性格を免れない。総裁選も、解散・総選挙を意識したものになるだろう。だが、選挙目当ての看板選びという政治ショーの側面ばかりが強調されると、その意図を国民は見透かしてしまうだろう。
麻生氏は、二〇一一年度に基礎的財政収支(プライマリーバランス)を黒字化する政府目標の先送りを主張するなど財政より景気重視の色合いを強めている。中川秀直元幹事長らは、歳出削減路線を転換しようとする麻生氏らの動きに神経をとがらせ、小池氏擁立に動く。小泉改革に対し、前者が見直し、後者が継承の立場だ。
五年間に及んだ小泉改革のどこを見直し、どこを受け継ぐのか。明確な総括を打ち出すべきだろう。それは、今秋にも行われる衆院選で、マニフェスト(政権公約)の柱になるはずだ。
問題は、政策の実行力である。発言力を増す公明党と政策をどうすり合わせるのか。さらに、仮に与党が衆院選で勝利しても参院の野党優位は変わらず、衆参のねじれは解消しない。福田首相は民主党への恨みを辞任会見で口にした。世論の支持を背景に、政策を推し進める確信としたたかな政治力を併せ持つ総裁を生みだせるか。見守る有権者の目は厳しい。
一方、民主党は小沢一郎代表の無投票三選が確定的だ。党内の政策論争がないのは物足りない。小沢代表は政権奪取に執念を燃やすが、政策をどう実現するかについては詳しく語っていない。中でも、党がマニフェストに掲げる販売農家への戸別所得補償制度などの政策に対し、財源の裏づけがないという批判が自民党などにある。論拠を、データも含めてきちんと示す必要がある。
次期衆院選は、まさに政権選択選挙である。各党はマニフェストをより分かりやすいものにし、その実行力をも競い合うべきだ。
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