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三年前、満員電車で女子高生に痴漢をしたとして強制わいせつの罪に問われていた防衛医大教授が逆転無罪となった。唯一の証拠だった被害者の供述について、最高裁は「信用に疑いの余地がある。重大な事実誤認」と一、二審で言い渡された懲役一年十月の実刑判決を破棄した。
教授は被告席から解放された。しかし女子高生の被害は残されたままだ。「ぬれぎぬ」だけでなく、「泣き寝入り」も防がねばなるまい。社会全体として、どう取り組んでいけばいいのだろうか。
最高裁は、高裁で使った証拠を基に審理する。事実誤認を理由に判断が覆るのは異例であり、痴漢事件での逆転無罪は初めてのことだ。
判決では、証拠が被害者の供述しかない場合、犯人と名指しされた者は「有効な防御が難しい」と誤審の可能性にまで触れ、より慎重な審理を促した。
背景には一九九八年以降、痴漢事件で三十件以上の無罪判決が相次いでいることがありそうだ。供述だけに頼る捜査は「ぬれぎぬ」を着せる恐れがある。そうなってしまった者は家族や職場、友人関係を失い、一生を棒に振りかねない。そんな警鐘を鳴らしたと受け止めるべきだろう。
「グレーゾーンの証拠状況」と、判決文は表現している。教授を有罪とするには、女子高生の証言に割り切れない疑いが残るという意味だ。審理も三対二と判断が割れる際どいものとなった。
三人は被害証言を不自然と判断した。しつこい痴漢行為を避ける強い行動を取っていないこと。一方で教授のネクタイをつかみ、非難した態度が不釣り合いなこと。途中の駅で下車した後、再び教授のそばに乗ったこと。
すし詰めの電車は死角が多い。そこにつけ込んだ痴漢事件は、目撃証言や物証が乏しい。今回も「触った」「いや触っていない」の水掛け論となった。
補強となる証拠がない限り、被害証言に厳しい点検を迫ったのがこの判決といえる。今後、捜査や裁判の在り方に大きく影響するだろう。目撃証言や物証が欠かせないとなれば、痴漢の申告をためらう女性も増えかねない。
人格を傷つけられた被害者に、これ以上の心の負担を負わせるわけにはいくまい。
初動捜査の段階から、できる限りの証拠集めが欠かせない。警察庁は既に、目撃者の掘り起こし、容疑者に付着した衣服の繊維鑑定に取り組むよう都道府県警に通達を出している。今回の事件で教授が望んだDNA鑑定も導入を検討していいのではないか。
痴漢は、朝の通勤、通学時間帯に集中している。ラッシュ時に合わせ、ホームや電車内を捜査員が見回るパトロールの強化も必要だろう。証拠集めには、周りの市民の協力も大切だ。見て見ぬふりは破廉恥な犯罪を助長するだけ、と肝に銘じたい。
痴漢を許さない多くの目があることが抑止力になる。
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