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「移植法」衆院通過 まだ議論の余地がある '09/6/19

 脳死は「人の死」か、そうでないか―。一人一人の死生観や判断に委ねてきたものを、これからは一律に「人の死」とする。そんな臓器移植法改正案が、衆院で可決された。唐突に通ってしまった感もぬぐえない。参院では修正も含めて、さらに突っ込んだ審議をしてもらいたい。

 これまでは臓器の提供を望む人の場合にだけ、脳死を「人の死」と認めてきた。改正案は、この限定条件を取り払う。本人の提供の意思がはっきりしなくても、家族の了解があれば移植に応じられるようにする。

 さらに15歳未満はドナー(臓器提供者)になれないという年齢制限を外す。開かずの扉から、やっと光が漏れてきた。国内では移植のすべがなかった小児患者や家族にとっては、一日千秋の思いだったのではないか。

 しかし法施行から11年余りで81件にすぎなかった脳死移植数が、これで一気に増えるだろうか。救急医療の現場では「貧弱な体制のまま、脳死判定を押し付けられても対応できない」といった声もあるようだ。

 ドナー希望者のすそ野が広がっていないことも大きなネックだろう。内閣府の世論調査によれば、「ドナーになりたい」との意思を持つ人の割合は、この10年で31・6%から43・5%に増えてきた。ところが法定のカードなどで意思を明らかにしている人は、9%足らずのままだ。

 改正案は、この「言行不一致」を逆手に取ったとも言える。本人の「ドナーを拒否する」との意思表示がない限り、家族の同意で移植の話を進められるからだ。

 とはいえ、移植臓器を増やすことを最優先するあまりに「人の死」の定義やルールを変えた、と受け取られるようでは本末転倒だろう。日弁連も、そう指摘している。これでは法改正をしても移植医療に対する国民の理解は深まらず、結局はドナー確保にもつながらないのではないか。

 医療現場での混乱も予想される。「脳死」判定を受けた途端、患者はドナー候補者に変わる。最善を尽くされるはずの治療がどう変わるだろう。保険医療はどの時点まで適用されるのだろうか。疑問がいくつも浮かぶ。

 臓器提供の「同意」を求められる家族の、精神的な負担も大きかろう。中でも子どもの場合は、事前の意思確認が難しい。乳幼児などの場合は事実上、家族の同意で決まるだけになおさら悩むことにならないだろうか。

 児童虐待が年々増える中、虐待した親が、子の臓器提供に応じるケースもあり得る。そんな想定から、衆院でも第三者委員会を設ける議論があった。家族の判断があれば十分だとは言い切れないところにも、難しさがある。

 誰もがドナーとなり得るし、家族として同意を求められることもあり得る。さまざまな立場を想定しての慎重な審議が、参院で望まれる。国民も自分自身の問題として真剣に考えなければならない。




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