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江戸時代、天下無敵の強さで鳴らした谷風が、幕下の力士に敗れたことがある。二回の七場所連続無敗記録を誇った大横綱だ。江戸っ子たちにとっては、さぞかしサプライズだったろう▲相手は病親の世話をしている貧乏力士。それを聞いた谷風が、一計を巡らせた。懸賞金を取らせようと、特別興行を催してわざと負けたのだ。「いい話じゃねえか」と、後で知った人々をうならせたという。落語や講談の演目にもなった「谷風の人情相撲」である▲こちらは平成の世、八百長疑惑で週刊誌に名指しされた横綱朝青龍関。きのう、損害賠償などを求めた裁判に出廷し、「全くのうそです」と否定した。中心人物とされたことにも「悲しい。いろんな思いを含めて情けない」と悔しさをにじませた▲片や、同じ法廷で「朝青龍の記事が事実かどうか分からないが、今も八百長は行われている」と証言したのは元小結の板井圭介氏。さて、どちらの言い分が本当なのか。土俵外の「取組」をテレビ桟敷で見守るしかない国民には、何とももどかしい▲何度も取りざたされてきた八百長疑惑。大名がスポンサーの江戸時代は、あるじの顔を気にして、星の譲り合いも日常茶飯事だったという。こんな伝統が今なお続いているとは、信じたくないのだが。
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