|
「チンジュノモリ」は国際学会の公用語になっている―と植物生態学者の宮脇昭さんが書いている。神が宿るとされて人の手が入っていないから、本来の植生が残っている。英語にもドイツ語にも訳しにくいという▲自然に生えて成長した木は、その地の環境に一番よくなじむ。深く根を張り、葉を広げ、地震や風水害にも耐える。木を植えるなら「鎮守の森」をお手本に。宮脇さんが長年訴え、実践してきた考え方が、国有林で初めて取り入れられた▲場所は呉市の野呂山。これまではもっぱら「経済木」のヒノキや杉が植えられていた。ところが5年前の台風で、頂上付近の30年近いヒノキが次々に倒れた。根の張りが弱かったせいだ。そこで「跡地」は本来の植生である広葉樹に、ということになった▲宮脇さんが選んだのは、カシやシイなどの照葉樹、山桜やケヤキなどの落葉樹。いわば雑木である。来月までに、2万本の苗木を交ぜて40〜50センチ間隔で植えていく。互いの競争でたくましい森に育つはずだ、という▲21年前の集中豪雨で大被害が出た広島県旧加計町。戦後、密植したヒノキが裏目に出た。地元に伝わる江戸中期の文書にはこうあったという。「広葉樹を残し、混植を実行せよ」。鎮め、守る古来の知恵を、今に生かしたい。
|