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自殺 '10/1/31

 「おかげさまで助かりました」。救急病院で一命をとりとめた人はそう言うはずだ。ところがその青年医師は面食らうことが多かった。何人もの患者から「なぜ助けたんですか」と言われたからだ。自殺を図った人たちである▲学生のころ「死にたいと思う人は自殺してもいい」と思っていた。世間の見方もそうだった。本人のためには、助けない方がいいのだろうか…。仕事の意義を見失う時があった。亡くなった自殺研究の第一人者・大原健士郎さんだ▲「死にたい、は実は生きたいという叫びだった」と後になって知る。元患者を追跡調査すると、8割もが「助かってよかった」と答えたからだ。その屈折した心理に迫り、社会にはこう訴え続けた。「孤独な魂は手を差し伸べられるのを待っている」▲訴えは実を結ばなかったのだろうか。日本の自殺者は昨年も3万人台で12年連続の高止まりだった。同じ年の殺人の犠牲者は約千人。交通事故死は4千人台。けた違いの死の累積に、言葉を失う▲「僕の仕事はとことん聞き役になること」とも言っている。親身になって耳を傾ける。悩みのはけ口になる。それで孤独が和らぎ、自然治癒力が働くようになるという。あなたも周りの誰かの力になれるかもしれない、との遺言にも聞こえる。




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