米、武力背景に秩序づくり/北朝鮮、使用可能な核ない
ヒロシマ発の訴えに期待
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まえだてつお 福岡市生まれ。長崎放送記者、フリージャーナリストを経て1995年から現職。軍縮・安全保障論。著書に「非核太平洋・被爆太平洋」(筑摩書房)、編著に「現代の戦争」(岩波書店)など。64歳。
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―米国のブッシュ政権が核兵器の先制使用に言及するなど、核をめぐる世界情勢が変わりつつあります。
背景には核の脅威の質の変化がある。冷戦期の核兵器は「使える武器」ではなく、核抑止論に基づく「政治的な武器」だった。米ソ両国は「一度核兵器を使えば人類は破滅する」という恐怖感を共有し、さまざまな交渉を通じて互いの思惑を探ることができた。最悪の場合を想定した首脳間のホットラインもあった。
しかし、フセイン政権崩壊前のイラクや北朝鮮、イランなどの「核疑惑国」と米国との間には、旧ソ連とのように「対立しながらも協調する」関係は存在しない。その結果、米国は唯一の超大国となった立場を利用し、武力を背景にした秩序づくりをしようとしている。
―イラク戦争の「大義」である大量破壊兵器は発見されず、情報操作の疑いが持たれています。
大量破壊兵器の疑惑を戦争の口実に利用したのだろう。米国がフセイン政権を倒した本当の狙いはイラクの石油支配であり、イスラエル擁護の立場をとる中東地域戦略の一環でもある。これは米国が次の「標的」にするイランの核開発問題でも同じだ。
―北朝鮮の核開発問題でも米朝間の対立は深まっています。
個人的には、現段階で北朝鮮の技術が使用可能な核兵器を保有するまでに達しているとは思っていない。しかし、このままだと核実験、核兵器保有宣言と突き進み、対抗するために米国が武力行使に踏み切る最悪の事態を招きかねない。
北朝鮮は、核拡散防止条約(NPT)からの脱退宣言や韓国と交わした非核化共同宣言の白紙化を一方的に発表した。これらを容認することはできない。国際社会が一致して核開発計画の放棄を迫る努力を続けなければならない。
―解決の見通しは。
重要なのは米国への働きかけだ。北朝鮮は、朝鮮戦争は休戦状態で、今も戦争が続いていると考えている。いつでも韓国に核兵器を持ち込める米国は脅威だ。根本的な解決のためには、核保有国がNPTで規定された核軍縮に向けた「誠実な交渉」を実行することが不可欠だ。
―米国の今の姿勢からは、核軍縮の働きかけは難しそうです。
米国で核戦略を立案する人たちは広島、長崎の実態をほとんど知らない。戦後の世界を核戦争の瀬戸際に追い込んだキューバ危機(一九六二年)も「過去の出来事」としか考えなくなっている。
さらに、技術の発達で核兵器の小型化や爆発威力の制御が可能と考えられるようになり、核の脅威が実感できなくなっている。イラク戦争で使用された劣化ウラン弾を通常兵器と位置付ける姿勢もその表れだ。これは米国に限らず、ロシアやフランスなど他の核保有国にも言えることだ。
―被爆地はどう取り組むべきですか。
核をめぐる世界情勢の変化に加え、昨年は日本国内でも非核三原則の見直し発言が政府首脳から飛び出した。被爆体験は今、「昔々の物語」になりかねない状況にある。
必要なのは被爆の実相を訴えると同時に、平和をつくり出すためのより具体的なメッセージの発信だ。例えば、北東アジアの非核地帯条約締結やNPT体制の保持を呼びかけるといった提案は、「ヒロシマ発」となることで訴える力は増大されるはずだ。
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