'99. 9. 5
 ある中学校の現場から

 あきらめない 

「一緒に頑張ろうや・・・」


(4)
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 朝のホームルーム。「うるさーい、静かにしんさいや!」。今日も四組の教室から、足立亜衣(27)の声が廊下に響く。でも、一部の男子の耳にはどうしても届かない。「おい、ゲームどこまでいった?」「今日、英語あるん?  だりいのー」。厳しい視線を送っても、ざわめきはやまない。

 「よそのクラスは静かにしてるんよ。迷惑でしょ」。足立がため息交じりに言うと、初めて反応が返ってきた。「先生の金切り声の方がメーワク」。「とにかく、前を向きんさい!」。「ぼくらの基本的人権を尊重してほしいよね」。会話は擦れ違うばかりだ。

 その時。学年主任の岸本直樹(45)が、後ろの扉から教室をのぞき、「おはようございまーす」と子供たちに声をかけた。静かになったのを見届けて、岸本は笑顔で帰って行った。毎朝、廊下のごみを拾うふりをしながら、教室の様子を見にきてくれる。さりげない支えがありがたい。心強いと、足立は思う。

 初めての担任。現実はドラマや小説のようにはいかない。でも、あきらめたくない。一人ひとりと向き合いたい。逃げ出したい時は、あるけれど。

登場人物
 漢字テストの時間。気になる男子の一人が「ぶち、たいぎー。もう勉強あきた。疲れた」と、解答用紙を床に落とした。「がんばろうや」。足立が拾って励ます。でも、彼は机に突っ伏して、ひじで用紙を払いのけた。

 再び拾い上げて、足立が言う。「一緒にがんばろうや…」。そして、彼の肩に手を乗せた。少しの沈黙の後、彼はおもむろに顔を上げ、テストに向かった。足立の顔がほころぶ。ほかの子供たちが、ほっとした表情になった。

(文中仮名。写真と本文は関係ありません)

<教師アンケートの回答から>
 なぜ学級崩壊? 食事のマナーや人の話を聞くなど、家庭でするべきしつけを学校にゆだねるところに原因がある。(26歳 小学・女)▽人間関係づくりに憶病な子が多いため、なんの抑制力もない、つながりのない集団ができている。(28歳 中学・男)


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