'99. 9.14
 ある中学校の現場から

 補習授業 

「一対一」の真剣勝負


(12)
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 いつもは教室いっぱいの子どもたちも、夏季補習の時は一クラスに十七人。だから、教室がとても広く感じられる。しかも教師が三人もつくものだから、ほとんど「マン・ツー・マン」で子どもたちに向かえる。

 補習四日目、英語の時間だった。「きょうは、単語テストをやるぞ。一問間違えるごとに、腕立て伏せ十回」。一年二組の担任の坪井宏(36)は、子どもたちにこう宣言した。鉛筆、ミルク、犬…。簡単な英単語を五つ出題した。それでもパーフェクトは五人ほどだった。再テストのチャンスを与えたものの、それでも全員正解にはならなかった。

 「子どもの理解力、学習能力がどこまでついているか、じっくり見れる機会。基礎的な力をつけてやらねば…」。進路指導主事をずっと務め、六年ぶりに担任を持った坪井は、とりわけ補習に力が入る。先輩の姿に引きずられるように足立亜衣(27)と藤田大介(26)も、扇風機さえなく、三〇度を優に超す教室で、一人ひとりに懸命に声をかける。

 「おまえ、カンニングしたじゃろ」。全問正解した男の子に向かって、中西君がちゃかす。「いいかげんなことをゆうたらあかん」と笑いながら受け答えしていた坪井も、しつこい中西君に「外に出ろ」。廊下での説教となった。

登場人物
 結局、最後まで全問正解出来なかったのは六人。隣りの教室に連れて行き、約束通り腕立て伏せをさせた。「何でこんな問題ができないのか」。きっとそう言いながら、と思っていたのだが―。

 わずかに開いたとびらから見えたのは、「イーチィ、ニーイ」とゆっくり号令をかけながら、中西君と一緒に腕立て伏せをする坪井の姿だった。

(文中仮名。写真と本文は関係ありません)

<教師アンケートの回答から>
 「総合的な学習時間」の導入は? 知識が不十分で方針が固まらない。教師として何ができ、何をしたいのか、考えを聞いているところだ。でも、入試制度が変わらない限り、中学は学力中心にならざるを得ない。本当の意味で保護者に歓迎されるのか。(55歳 男・中学校長)


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