| ある中学校の現場から |
「一対一」の真剣勝負 |
![]() (12) |
|---|
補習四日目、英語の時間だった。「きょうは、単語テストをやるぞ。一問間違えるごとに、腕立て伏せ十回」。一年二組の担任の坪井宏(36)は、子どもたちにこう宣言した。鉛筆、ミルク、犬…。簡単な英単語を五つ出題した。それでもパーフェクトは五人ほどだった。再テストのチャンスを与えたものの、それでも全員正解にはならなかった。 「子どもの理解力、学習能力がどこまでついているか、じっくり見れる機会。基礎的な力をつけてやらねば…」。進路指導主事をずっと務め、六年ぶりに担任を持った坪井は、とりわけ補習に力が入る。先輩の姿に引きずられるように足立亜衣(27)と藤田大介(26)も、扇風機さえなく、三〇度を優に超す教室で、一人ひとりに懸命に声をかける。 「おまえ、カンニングしたじゃろ」。全問正解した男の子に向かって、中西君がちゃかす。「いいかげんなことをゆうたらあかん」と笑いながら受け答えしていた坪井も、しつこい中西君に「外に出ろ」。廊下での説教となった。
わずかに開いたとびらから見えたのは、「イーチィ、ニーイ」とゆっくり号令をかけながら、中西君と一緒に腕立て伏せをする坪井の姿だった。
(文中仮名。写真と本文は関係ありません)
|

