'99. 9.15
 ある中学校の現場から

 臨採の悩み 

慣れたころ「さよなら」


(13)
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 「八月いっぱいで、学校を離れることになりました」。一学期末の学年集会。美術担当の谷翔子(24)がみんなに告げた。体育館が少し、ざわめく。集会が終わると同時に、生徒が駆け寄る。「何で?」「ずっといてよ」。谷は黙っていた。ただ、涙をこらえていた。

 およそ三年間、谷は臨時採用教員として、この学校に勤めた。短大を卒業後、毎年のように採用試験に臨むが、壁は厚い。今年も合格通知は届かなかった。九月、産休を取っていた美術教師が復帰する。谷の身の振り方は決まっていない。

 「この時期に、学校を去るのはつらいです」。せみ時雨を聞きながら、谷は笑ってみせた。今年は一年生の担当。個々の性格や癖や持ち味を、やっとつかみかけた。これからなのに―。谷の顔から笑みが消える。

 「優しくて、お姉さんみたいな先生が好きでした」。生徒から贈られた、寄せ書きの言葉。でも、赴任直後はつらくて泣いた。褒め方がわからない。しかり方も分からない。距離が縮まらず、右往左往した時代。最近やっと、自然体で向き合えるようになったと思う。

登場人物
 もう一つの心残りは、顧問を務める美術部のこと。かつては部屋も道具もなかった。部員の半分は顔も出さず、活動はまるで「マンガ研究会」。部屋を確保し、資材を買い、コンクール出品という目標を掲げてきた。この夏休み、子供たちは文化祭に出す作品を半分仕上げた。完成する喜びを、一緒に味わえないのがつらい。

 「もう会えんの?」。夏の終わり、谷を囲んで、部員たちが聞く。「文化祭、見にくるから」と約束した。部活が終わっても、子供たちは帰ろうとしなかった。

(文中仮名。写真と本文は関係ありません)

<教師アンケートの回答から>
 教師に採用された決め手は? 試験は年々、現場重視になってきている。その意味では、臨時採用や講師での経験が生きたのかもしれない。(31歳 中学・男)▽一次試験は勉強すれば、だれでも受かる。二次は面接なので、「運」の要素が強いと思う。(25歳 小学・男)


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