| ある中学校の現場から |
少しでも子供のそばに |
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校内アナウンスが入った。「校長先生、お電話です」。男性は立ち上がり、校舎の方へ駆けて行った。校長の田島亮一(55)である。翌日も、田島を見た。今度は朝礼台にちょこんと座り、陸上部の砲丸投げの練習に見入っていた。 「なるべく子供の近くにいたいんよね」と田島は言う。校長の仕事は幅が広い。設備の充実を求めて市教委に足を運び、行事があるたびに地域を訪ねる。会議も多い。校内の草抜きや溝掃除も守備範囲。忙しいが、生徒と接すれば力のもとになる。 現場のことは教員に任せてある。みんな、頑張ってくれている。おかげで風紀の乱れもない。全体的に落ち着いている。あのころ、こんな日が来るのを想像できただろうか―。田島は、約二十年前を振り返った。
八月半ば、吹奏楽部のコンクールの日。人けのない学校で、田島は時計を見上げた。「あと三十分じゃね」。もうすぐ、わが校の出番が来る。見に行きたいが、学校を無人にはできない。「ぼくの分まで、よく見ておいてよ」。会場に向かおうとする私たちに、田島は何度も言った。
(文中仮名。写真と本文は関係ありません)
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