| '99.10.20 |
| 学級崩壊の現場から |
―《5》―
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同僚にも心を開けず |
横田は日課のように、平尾にクラスの状態を報告しに来た。「今日の算数は、みんな静かに聞いてくれました。給食も静かに食べました」。そして「昨晩、十二時までかかって仕上げたんです」と、ノートにびっしり書き込んだ授業研究を広げて見せた。五年一組の教室を見渡すと、至る所に張り出されたクラス目標に気付く。「元気に 明るく 健やかに」―。 平尾は、横田が痛々しかった。教師歴二十年を越える経験が彼女を支えている。どの子もクラスの輪から外れないよう、まっすぐ育てたいという思いが伝わる。本来ならば全職員で五年一組を支援したい。でも彼女は「助けて」とは言えない人。必死で踏ん張っている所に、土足で上がりこんでもいいものか。 平尾自身、ちょうど横田くらいの年に、「大失敗」を体験した。三年の担任だった。「真っ正直な人間に育てんと、将来この子らが困る」。そんな使命感に燃え、忘れ物が絶えない男子に言ってしまった。「言う事を聞かんなら、学校に来んでよろしい」。すると彼は本当に来なくなった。 「お願いだから、学校に来てください」と彼に謝り続け、溝を埋めた。一人にかかり切りになった結果、周りの子が暴れ出した。学級を立て直せなかった。この体験を、何度も横田に話した。「子供なんて、先生と心が通っていないと規則なんて守らん。まずは、信頼関係を築かんと」。横田が自分の痛みを語れるように、心を開いてくれることを願った。 そんな十一月のある日。五年一組の弘志が職員室に駆けて来た。そして平尾に叫んだ。「先生、いじめじゃ、いじめじゃ」。平尾は教室に走った。放課後、午後六時を回っていた。辺りはすでに真っ暗だった。 (文中仮名。写真と本文は関係ありません)
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