| '99.10.24 |
| 学級崩壊の現場から |
―《9》―
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みんなの「癒しの場」 |
「子どもが言うことを聞きません」。保健室の先生、小山さゆり(50)にこぼすと、明るい声が返ってくる。「そんなことない。みんな生き生きしてきたよ」。その一言に、何度救われたことか。小山は、クラスの不登校児とその母親の相談相手も引き受けてくれている。感謝する一方で、子どもや保護者と心が通じている小山を、大中はうらやましく思う。 「私の役目は傷を治すこと。通知表は付けんから、信頼関係をつくりやすいんよね」。五年のころ、ひっきりなしに保健室を訪れた子どもたちを、小山は思い出す。 教室にいるのが苦痛で、一日に何度も腹痛を訴えに来た子。図工の時間、校庭の風景画を描く課題が出たが、外に出るのが怖いと泣き、保健室にこもった子もいた。登校するとランドセルを背負ったまま、保健室の窓越しに小山を目で追う。放課後も心行くまでおしゃべりを楽しみ、子どもたちは帰って行った。 休み時間になると、女子たちが続々と保健室にやって来た。「これ、秘密よ」と念を押し、担任横田由美(42)への感情を一気に吐き出す。「悪いことをした子だけ怒ればいいのに、先生は『みんなの責任だから』って、全員に説教するんよ!」。うんうんと、言い分にじっくり耳を傾ける。それが、心の薬になる。 保健室が、横田にとっても「癒(いや)しの場」になればと、小山は願った。悩みも苦しみも、さらけ出してくれればいい。一緒に知恵をしぼれば、道が開くこともある。だが、横田の口癖は「だいじょうぶです。うまくいっています」。関与されたくない警戒心が、口調から伝わる。結局、最後まで痛みを共有できなかった。 大中が六年一組の担任になった日。小山は、大中に言った。「何でも言うてね。力いっぱい支えるから」。まず、大中が作った学級通信を読み込むこと。それを保健室の壁に張り出すことから、小山の「支援」は始まった。
(文中仮名、写真は本文と関係ありません)
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