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変容する地域
[8] 再編後の姿 情報不足 見えぬ負担 '08/1/10

 ▽「両基地とも活用」懸念

 ごう音が頭上と足元から突き上げた。話し声がかき消される。厚木基地を抱える神奈川県大和市。滑走路北側にある第四次厚木爆音訴訟団の事務局にいた訴訟団長の藤田栄治さん(73)は、窓越しに空を見やった。

 ▽住民4度目提訴

 「騒音は、一一〇デシベルから一二〇デシベルに達する。まさに拷問だよ」。滑走路に進入しようとしていたFA18スーパーホーネット戦闘攻撃機は空母キティホークの艦載機。二〇〇三年の配備だ。エンジン出力は従来機の35%増で騒音はさらに拡大した。

 基地周辺の八市の六千百三十人が、飛行差し止めと騒音被害の賠償を求める訴訟を起こしたのは十二月十七日。過去三度の訴訟とも国の賠償が認められた。在日米軍再編計画で艦載機の岩国基地(岩国市)移転が盛り込まれたのは、こうした負担を軽減するためだ。それでも、原告団は四度目の提訴に踏み切った。

 厚木基地は神奈川県中央部の大和市と綾瀬市をまたぐ形で広がる。周辺は一九六〇年代の高度経済成長期以降、ベッドタウンとして都市化。人口密集地の米軍基地としては、世界でも異例の存在となった。七三年、米第七艦隊の空母が横須賀基地(同県)を事実上の母港としてからは艦載機部隊が使い、周辺の約二百万人が騒音と事故の危険と隣り合わせで暮らす。

 基地近くに四十年以上暮らす原告の斉藤英昭さん(67)は「騒音は年々なし崩し的にひどくなった」と振り返る。艦載機移転の目標は一四年。歓迎し、騒音軽減を期待する住民も少なくない。

 ▽縮小計画示さず

 しかし、日本政府はその後に基地を返還、縮小する計画を示していない。国会答弁でも艦載機の整備部隊は厚木に残ると説明する。原告の多くは負担がどの程度減るのか不透明と感じている。

 厚木基地を長年取材してきた軍事リポーターの石川巖さんの藤沢市の自宅では八日、防音工事が始まった。スーパーホーネットの導入を背景に、国は助成の対象となる範囲を南北方向に大幅に拡大。滑走路の南約十二キロにある石川さんの家も含まれた。

 はからずも基地騒音の当事者となった石川さんは「艦載機が移っても、騒音はある程度までしか減らないだろう」と分析する。例えば、艦載機は空母が出港する時期が近づくと陸上の夜間離着陸訓練(NLP)に続いて相模湾に浮かぶ空母上で成果を試す。空母が横須賀を母港とする限り、艦載機は岩国から厚木を経由して訓練場所に通う―。石川さんはこう見る。

 ▽厚木のジレンマ

 「米軍は、厚木と岩国との間をひっきりなしに行き来し、二つの基地を自由に使うだけではないか」。原告団を裏方で支える藤田さんも、そう考えている。一九四五年の横浜空襲で焼け出されて大和市に移り住み、厚木基地の変遷を見つめてきた。「どちらも機能強化され、両方の住民が騒音に苦しみ続けるのでは。だからこそ岩国に苦しみを転嫁したくない」。騒音被害を身近に知るがゆえのジレンマは続く。

 二月の岩国市長選では艦載機移転問題が最大の争点になる。ただ、米軍再編は一カ所の基地だけで解決する問題ではない。岩国、厚木、沖縄…。パズルのように組み合わされた負担のたらい回しの側面もある。

 基地を米軍がどう使うのか。地域がどんな姿に変容するのか。再編完了まであと六年。住民が議論していくための情報は現時点では少なすぎる。

【写真説明】厚木基地の滑走路に進入しようとする空母艦載機スーパーホーネット。住宅地が間近に迫る=神奈川県大和市(撮影・荒木肇)




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