「衆院議員時代に培った国とのパイプを生かします」。出直し市長選で支持者にそう訴え続けた岩国市の福田良彦市長(37)は十四日、そのパイプを早速、使った。
上京した福田市長は石破茂防衛相、高村正彦外相と相次ぎ会談した。騒音対策などを条件に、米空母艦載機の岩国移転に協力する姿勢を提示。財政支援で国の前向きな回答を引き出した。
国には当面、新庁舎建設費の補助金三十五億円を求めた。次に、米軍再編への協力度に応じて国が自治体に支払う再編交付金の獲得を進める構えだ。市の試算で交付金は十年間で計百三十四億円に上る。財源にめどがつけば、大型事業が動きだす可能性は高い。
暴行事件も影
その一つが、住宅団地など百二ヘクタールを開発する計画が頓挫した愛宕山地域開発事業の跡地転用だ。造成地の四分の一は国立病院機構岩国医療センターの移転などが加速しそう。残るエリアは国への売却交渉を県に一任している。
だが地元自治会を中心に、この跡地を艦載機移転に伴う米軍住宅の「有力候補地」とする国の姿勢に反発は根強い。「また米兵による暴行事件が沖縄であった。米軍住宅につながる計画変更なら、簡単に応じられない」と跡地近くの四十代の主婦。福田市長も「(米軍住宅は)愛宕山ありきではない」との見解を繰り返す。
中断していた岩国基地での民間空港の再開も一大テーマ。福田市長は十三日、山口県の二井関成知事と初会談し、二〇一〇年秋の羽田空港の新滑走路運用に合わせた再開に向けて全面協力を申し合わせた。岩国商工会議所の犬飼寿男専務理事は「経済界の長年の悲願が動きだした」と喜ぶ。
だが、県と二対一で負担する予定のターミナルビル建設など約百三十四億円の事業費確保が必要となる。事業主体も決まっていない。
このほか、出直し市長選で福田市長が掲げた公約は多岐にわたる。とりわけ「子育て日本一」では、小学生までの医療費の無料化、保育料や給食費の減免、小中学校校舎の五年以内の耐震化の完了などに踏み込んだ。
依存へ危機感
告示直前、福田氏はこれら公約の実現に「ハード事業に当面約三百億円、ソフト事業に年間約十五億円」が必要と見込んだ。これに対し、市の一般会計予算規模は約六百六十億円、一千億円を超す借金がのしかかる。
艦載機移転に反対する市議は「移転容認は、もろ刃のつるぎ。一時的に潤っても、長期的には補助金漬けから抜け出せなくなりそう」。基地への依存度と市財政の国への依存度とが、同時に強まりかねないと批判する。
市民の暮らしの安心・安全をどう担保し、財政再建とまちづくりのバランスをどう取っていくのか。十五万市民のリーダーを、厳しいかじ取りが待ち受ける。(広田恭祥、川井直哉)
【写真説明】高村外相(左)と笑顔で握手を交わす福田市長(外務省)
    
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