中国新聞

 


1.過疎地のパワー


 ■沿線大行進で幕開け ―あきらめムード 熱気に

 「振り返った瞬間、長く続く人の列に背筋がぞくぞくっとした 」。広島県加計町総務課交通担当の吉見茂さん(40)は、あの日のこ とを、今も鮮やかに思い出す。

 廃止計画が浮上した可部線の可部(広島市安佐北区)―三段峡 (広島県戸河内町)間四六・二キロを歩く一九九九年三月二十八日 の「存続大行進」だ。午前五時、三段峡駅を出発した行進は、約十 五時間かけて可部駅まで線路沿いの国道など五十四キロを歩き抜い た。

 全国から延べ1500人

試験増便最終日、可部線を利用して決起大会に参加する沿線 住民たち(2月12日、戸河内駅)

 沿線五商工会を中心につくるJR可部線存続実行委員会が主催し た行進には全国から延べ千五百人が参加。列は進むにつれ数を増し た。道路わきで手を振る人、深々と頭を下げるお年寄り…。先導し ていた吉見さんは実感した。「可部線が住民に必要とされている」

 廃止計画は九八年四月に突然、JR西日本が明らかにした。広島 市、加計、戸河内、湯来町、筒賀村の沿線五市町村でつくる可部線 対策協議会は陳情を重ね、約二週間で五万人の署名も集めた。だ が、JRはその九月に廃止・バス転換計画を正式発表した。廃止時 期は二〇〇〇年春とされた。

 沿線の住民や自治体職員の間に「もう無理じゃろう」と、あきら めムードが漂った。それを払しょくする転機の一つになったのが大 行進である。そのパワーは続き、存廃を見極める昨年十一月からの 百四日間の試験増便をJRに決断させ、さらに、期間中の多彩な利 用促進運動へと広がる。

 広島市を除く沿線四町村は過疎高齢化が進む。可部線の乗客も必 然的に減り、国鉄民営化時に比べ約四割も落ち込んだ。地域では、 以前から多くの出先機関や企業の流出も続いていた。その中での廃 止計画浮上。

 「高齢者や学生など必要とする人は多いのに」「なぜ過疎地だけ 切り捨てられるのか」「このままでは地域が廃れてしまう」。危機 感が存続運動のバネになった。

 地域の再生を誓う

 可部線問題とほぼ同時に浮上した広島法務局加計出張所の統廃合 問題では、住民たちが原告団を編成して廃止取り消しを求め提訴。 請求棄却とした一審判決を不服として今、控訴している。

 「可部線存続運動の根底にも、地域を守るという思いが流れてい る。廃止されれば鉄道は二度と戻らない」と存続実行委の池田晃二 委員長(62)。

 神楽や棚田ツアー、コンサート、映画祭…。官民一体で次々利用 促進イベントが打たれ、住民による乗車運動が展開された。筒賀村 の大江真総務課長(50)は「それまでも頑張ってきたと思う。それが かすむほどの百四日間だった」と振り返る。

 試験増便が終わった今年二月十二日、戸河内町での「がんばれか べせん!決起大会」は約五百人の住民らで熱気に包まれた。「可部 線とともに地域の再生を」。力強く宣言が読み上げられた。

 JRは三月二十日、四月一日から一年間の試験増便再開を発表し た。試験増便で存廃ラインとされた輸送密度八百人に対し、結果 は、あと一歩の七百五十九人だった。

 
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