中国新聞

 


3.1602キロの模索


 ■観光客増へ懸命の努力 ―沿線地域の熱意が支え

 トロッコ列車運行

 「ボーッ」と汽笛が鳴った。トロッコ列車「奥出雲おろち号」 が、ゆっくりとJR木次駅(島根県木次町)を出発した。定員六十 四人の車内は、登山スタイルの中高年や、親子連れでほぼ満員。列 車は曲がりくねった斐伊川沿いを時速四十キロで走る。ガラスのな い車窓から眺める奥出雲の新緑は、一段と鮮やかだ。

観光客でにぎわうトロッコ列車「奥出雲おろち号」。沿線自 治体が経費を負担している

 木次線は、宍道(島根県宍道町)と備後落合(広島県西城町)を 結ぶ八一・九キロ。二十二年前、旧国鉄の赤字ローカル線廃止の動 きに危機感を募らせた沿線十二町村が「木次線強化促進協議会」を 結成。イベント列車の運行や駅舎整備に努め、一九九八年からは毎 年、春から秋の休日を中心にトロッコ列車を走らせる。

 年間二千七百万円の運行費は全額、沿線自治体の分担と県の補助 金で賄う。四年目を迎えた今年四月、利用者は累積で五万人を突破 した。「厳しい状況を支えてきたのは、沿線地域の熱意」。JR西 日本米子支社の田子整・木次鉄道部長の認識だ。

 年間五百二十万円を負担する横田町の藤原純夫企画課長は「町の 予算規模から、非常に厳しい額」とため息をつく。だが、地元利用 が減少し続ける中、「観光客を増やす努力は欠かせない」と断言し た。

 山口県錦町から岩国市川西までを約一時間でつなぐ「錦川清流 線」(三二・七キロ)。八七年、旧岩日線の存続運動を受け、第三 セクターに転換したこの路線を支えているのも、地元の熱意だ。

 「通勤利用」は半減

 三セク化した後、住民は「錦町錦川清流線を育てる会」を結成。 イベントを軸に中心に観光客を呼び込む。それでも、乗客は開業翌 年の五十八万四千人をピークに減り続け、昨年は四十三万七千人 に。特に通勤利用は半減した。昨年度は千三百五十一万円の赤字経 営だった。

 育てる会の会長、堀江泰錦町商工会会長(46)は、利用促進活動の 転機を感じている。「最終的には地元が『足』として利用しなけれ ば、存続は難しい」

 苦境続きの三セク

 赤字路線の「新たな選択」とされた三セクだが、全国的にも苦し い状況が続く。「イベントに加え、世帯ごとの回数券購入運動など を検討したい」。堀江会長たちの模索は続く。

 一六〇二・六キロ。JR西日本管内の地方ローカル線の総延長距 離である。かつて、人だけでなく木材や農産物を大量輸送した経済 路線は今、「役割は終わった」とばかりに、切り捨ての矛先を突き 付けられる。中国地方では、九〇年に大社線、九七年に大嶺線が鉄 路を閉ざした。

 「『マイレール』の意識を持ち、地元が守りきるしかない。美し い山、川沿いを走る同じ鉄道として、可部線はぜひ残ってほしい 」。国鉄職員時代から、鉄道の盛衰をみてきた錦川清流線専務の中 野佳明さん(66)は力を込める。横田町の藤原企画課長も「広島市と つながり、木次線より沿線人口が多い可部線は再生できるはず」と 言う。

 「鉄路の役割は、終わっていない」。中国山地の各地からのエー ルには、確信が込められている。

 
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