■中山間地の魅力を発信 ―町おこしの機運 高まる
「わー、大きい」。コンクリートの巨大えん堤から見下ろした子
どもたちが声を上げた。広島県加計町に建設された温井ダム。五月
末、JR可部線に乗って広島市南区、段原小の四年生五十二人が見
学に訪れた。
学習テーマは「水」。「飲み水はどこから流れてくるのだろう
」。そんな疑問から選んだ見学地が温井ダムだった。えん堤の高さ
は百五十六メートル。広島市や瀬戸内海島しょ部など二十五市町に
水道水を供給している。
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可部線を利用し、温井ダム見学に訪れた広島市・段原小の4
年生。アーチ式では国内2番目の高さを体験した(5月28日)
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車窓の風景見入る
利用した可部線からは太田川の水の流れが見える。「上流に進む
につれ増す透明度や岩の様子の変化…。乗って良かったですよ」と
平田健三教頭(49)。飽きずに車窓風景を楽しむ児童の姿にも驚いた
という。
実は、段原小のダム見学は、市内の小中学校が本年度から始めた
「自然体験活動」での可部線利用の第一陣でもあった。
可部線の存続運動で浮かび上がったキーワードの一つが「都市・
農村交流による可部線再生と地域活性化」。その一環として沿線自
治体の可部線対策協議会が「自然体験活動」での可部線利用を呼び
掛けた。
神楽や棚田ツアー
存廃を判断する試験増便の期間中も、とんどや神楽、棚田ツアー
など、都市住民との交流イベントが次々と繰り広げられた。それは
単に鉄道の利用運動でなく、地域の文化や歴史、魅力の情報発信、
町おこしの機運へと高まった。かつて産業を支えた太田川の川舟、
たたら製鉄も再現された。
人口が約千四百人で県内二番目に少ない筒賀村は、計九回の棚田
ツアーを実施。山村の原風景はもちろん、役場職員がガイド役を務
めた素朴さが受け、多くのお礼てがみも届いた。内田和昭村長(64)
は「村は都市との交流で生き残るしかない。試験増便はいい契機に
なった。これからも魅力を発信したい」という。
広島大名誉教授で広島国際学院大の北川建次教授(66)=地理学=
は、広島都市圏の人口集積や地理的条件などから、こう指摘する。
「広島は間近に海と山が控え、それを生かすことが魅力アップにつ
ながり、広域都市圏としての機能を高めていくことになる。そのた
めに共生的、循環型の交流が必要。そこに可部線の可能性も見えて
くる」
広島市39校が予定
現在「自然体験活動」での可部線利用を、広島市内の三十九校約
六千四百人が予定している。うち約七割が太田川や水をテーマにし
ている。その他は農林業体験や自然観察など。太田川下流域に恩恵
をもたらす中山間地域の営みに触れる絶好の機会として注目されつ
つある。
温井ダムで児童の案内を務めた加計町総務課の栗栖修司さん(41)
は「次世代を担う子どもたちに上流域を考えてもらい、形だけでな
い都市と農村の関係を築く何かを残せれば」と夢を託す。