広島県加計町の可部線殿賀駅。高台にある駅舎の向かいの田に、縦90センチ、横5・4メートルの看板が立つ。「ありがとう可部線」。地元住民が作り、今月3日に掲げた。「列車への感謝の気持ちを表したかった」。殿賀福祉会の栗栖藤行会長(74)は住民の思いを代弁する。
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「ありがとう可部線」と書かれた看板が立つ殿賀駅前
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存続運動を通じ、沿線各地で都市住民との交流が進み、過疎に悩む農村が活気づいた。殿賀地区は「水仙の里」づくり。同町船場、来見地区は安野駅周辺に多くの花を植え、全国から「花の駅」に鉄道ファンが詰めかけた。同町津浪地区では、広島市内などの若者グループとの交流が芽生え、筒賀村井仁地区では「井仁の棚田」が人気を集めた。栗栖会長は「交流を通して住民に一体感が生まれた」と強調する。
来年の開催悩む
可部線を媒介に交流が盛り上がっただけに、井仁地区は廃止に頭を抱える。「井仁棚田まつり」には多くの人が可部線で訪れたが、山あいの地区は駐車スペースが少なく、バスでは団体客の輸送に限界がある。祭りの河野司実行委員長(57)は「正直、悩んでいる。来年以降も続けたいけど…」と苦しい胸の内を明かす。
戸河内町の栗栖芳則総務課長も「廃止で地域を廃れさせてはいけない」と危機感を募らせる。鉄路という求心力に替わる魅力や地域づくりが必要になる。
船場、来見地区では、昨年11月にJRが国に廃止届を出すと住民の熱意が冷めた。活動も休止状態になったが「廃止後に何もしなければこの地区は陸の孤島になる」。元船場地区長の横山照夫さん(57)らが、再び立ち上がった。四季を通じて途切れないように花を増やし、町がJRから無償で譲り受ける駅舎を使い、地区の歴史を紹介するなどの活性化策を練る。
加計、戸河内、湯来町と筒賀村の沿線4町村は7月、国土交通省の「都市地方連携推進事業」の指定地域に選ばれた。4町村で「可部線沿線地域活性化調整会議」を発足させ、都市農村交流にかかわった住民らと、補助金を活用した交流促進の施設やプログラムづくりに着手した。
広島市安佐北区の安佐町地区は、小河内駅の駅舎と広場を活用した産直市などの構想を温める。可部地区の可部駅周辺の住民は、廃止に伴う駅前広場の再整備と連動させ、古い商家が並ぶ商店街の魅力をPRして多くの人を呼び込み、活性化に結び付けようと協議を重ねている。
地域の「顔」である駅がなくなる影響も小さくない。昭和30年代まで商業拠点として栄えた加計駅前の商店街。過疎化や商店主の高齢化などで、約90軒のうち約20軒が店を閉めた。クリーニング店を営む加藤明次さん(74)は「食べていけないから後継者も育たない。駅という明かりが消えれば、商売はますます厳しくなるだろう」と嘆く。
駅前どう活性化
同駅前など中心市街地の活性化は、来年10月に予定する加計、戸河内町、筒賀村との合併後の重要課題にもなる。新たなにぎわい創出に向け、駅の跡地を有効活用する知恵も求められている。
鉄路の廃止で岐路に立つ沿線地域。横山さんは「廃止にめげず、地道に活動を続けたい。船場、来見地区で成果が上がれば、他地区にいい影響を与え、新町全体の盛り上がりにつながる」。廃止をバネに住民パワーの結集を呼び掛ける。
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