下. 観光振興

名所結び魅力を創出
廃線敷活用や車対策が課題

「鉄路の先に 廃止迫る可部線 可部―三段峡」

 可部線の終点にある、広島県戸河内町の国特別名勝三段峡。紅葉シーズンが終盤を迎えた十六日、三段峡駅に午前十一時前に到着した列車は約六百人の乗客であふれた。例年なら観光客が減り始める時期だが、今年は廃止前の記念に乗る人たちでにぎわいが続く。

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可部線の廃止を前に、観光客でにぎわう三段峡駅前(広島県戸河内町)

 収入減に危機感

 昨年は約十三万人が訪れた。うち二割近い約二万二千人が可部線を利用した。駅前にある六軒の旅館や食堂、土産物店は経営者の高齢化が進む中で廃止を迎える。

 三段峡ホテル社長で、町観光協会の高下務会長(56)は「大打撃。観光収入は三分の一程度減るかもしれない。今後もわれわれがここで生きていけるのか…」と、危機感をにじませる。

 存続運動をきっかけに沿線地域の魅力が都市住民に再認識され、戸河内町や加計町、筒賀村を訪れる観光客はここ数年急増している。三町村の入り込み観光客は一九九九年の五十五万人が二〇〇〇年に六十二万人、〇二年には加計町の温井ダムの一般公開も始まり、九十二万人に伸びた。

 観光路線の役割も担ってきた可部線。大量輸送手段を失う三町村は来年十月の合併を控え、観光振興という共通の課題に直面する。だが、行楽シーズンの観光客の輸送をどうするか、対応策のめどは今のところ立っていない。

 三段峡ではマイカーやバスで訪れる客が増えることが予想され、駅前の再整備が必要になる。「駅前は狭く、現状ではバスや車の出入りが難しい。廃線敷や駅舎のスペースを利用し、ロータリーを作るなどの対策を考えたい」と町産業観光課の沖段琢磨課長。しかし、財政面の問題もあり、具体的な計画づくりはこれから。

 加計町の加計駅前商店街では、空き店舗や民家を活用した「街ぐるみ博物館」が九五年にスタートした。レトロな展示が観光客の人気を呼び、都会の児童、生徒の総合的学習の場にもなった。町商工会の武本昭文会長(70)は、可部線廃止で観光客の減少を予想するが「今後の運営方法はまだ見えてこない。温井ダムなどから車で立ち寄る流れができればいいのだが…」と暗中模索の状態だ。

 JRから無償譲渡を受ける廃線敷の活用も課題だ。湯来町を含む四町村は、JRからの地域振興への協力金などを基に、安野(加計町)―三段峡間を遊歩道やサイクリングロードなどに転用する案を提示。JRが提供する予定の列車を加計駅と安野駅に展示し、観光に活用する計画もある。

 一方、住民からは「廃線敷を鉄道再生に使ってほしい」などの要望もある。加計町は「負の遺産とならないように使いたい」とし、住民の意見を聞いて活用法を詰める。

 三町村は、観光を合併新町の主要産業の一つと位置付ける。加計町産業観光課の仲田道男課長補佐は「温井ダムや三段峡など、新町内の観光スポットを巡るルートを開発したい。食事や買い物ができる場所は限られており、施設や場所ごとに役割分担をするべき」と強調する。

 交流・参加で集客

 同町の佐々木清蔵町長は、新町の入り込み観光客を五年以内に百万人以上にする目標を掲げる。「見物だけでは客は通り過ぎてしまう。参加、交流もできる観光資源を開発し、リピーターを増やしたい」と新たな魅力づくりに取り組む。

 観光振興は地域づくりにもつながる。「自分たちの地域は自分たちで築き上げる意識を持ってほしい」と佐々木町長。廃止後も地域を輝かせ続けるためには、住民と行政が一体で知恵を出し合い、地域の力を高めることが欠かせないからだ。

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