太田川をまたぐ広島自動車道の高架橋のほぼ真下にある駅舎。す
ぐわきの踏切を渡り山道を登っていく。石組みの棚田が広がり、多
くの電柱と幾何学的な景観を描く。見上げていた自動車道は間もな
く眼下へと移る。
この道を九百メートル、約十五分歩くと、工房「からっぽ」に着
く。オーナーの宇野淳子さん(60)は草木染をする。作品が並ぶ工房
は、食事も楽しめる喫茶店でもある。
「ほっとする時間を取り戻してほしい」。広島市西区から移り住
み十六年目。光や風…。自然の潤いを自由に感じてもらいたいと思
う。車の故障で乗って以来、可部線にもひかれた。今年から月一
回、可部線利用のイベントを開く。「乗ってきたよ」と言う人が増
えた。里帰りするように、遠くから何度も可部線で訪れる人もい
る。
「効率や利益ばかり追求した結果が今の日本。多くの人が疑問を
感じ始めた」と宇野さん。車内から工房へと続く、安らぎの空間を
大切にしたいと考える。「便利さを運ぶだけがすべてではない。潤
いの場に導く路線があってもいい」