高台の駅舎からぐるり見渡せる地域は、中世文化の名残をとどめ
る。二つのトンネルから駅に滑り込み、出ていくディーゼルの旅
は、タイムスリップするかのように、中世ロマンにいざなう。
周囲を山に囲まれた天然の要害。山には中世の城跡がいくつも残
る。駅から徒歩約十分の山手にある実際寺。十四世紀前半、当時、
土居を拠点に太田川上流域を支配したとされる栗栖氏が建立。開山
にあたり京都五山・東福寺の住職も務めた高僧、雪舟禅師を招い
た。
「戦略面に加え、地域に学問、文化を植えつけようとしたことが
うかがえる。当時、有数の文化拠点だったようだ」と、町史編さん
委員の今田三哲さん(78)。実際寺参道は見事な石段、石畳が残る。
開山塔、栗栖一族の墓など、価値ある石造物も。町郷土史研究会が
今夏、編集した冊子「石の文化」に記録された。
地元や研究会などは今春、初めて「雪舟さんまつり」も開いた。
見学者も増えている。町内唯一の檀家(だんか)という池田晃二さ
ん(65)は「見直された地域の資源。まつりなど続けていければ」と
願う。