中国新聞

棚田の玄関口
田之尻駅・筒賀駅(筒賀村)

釣り人かかし お出迎え


春は太田川対岸の桜並木の眺めも格別な田之尻駅周辺。釣り人のかかし2体(手前)も歓迎

 「えっ。今の見た」。車内から声が上がる。田之尻駅を出た列車 はすぐ鉄橋にさしかかる。並行する橋に、二人の釣り人が糸を垂れ ている。実は駅近くの住民が作った二体のかかし。遊び心に心が和 む。

 村の東端にあたる田之尻駅周辺の住民にとって、可部線は唯一の 公共交通機関。一人暮らしの高齢者が多く、通院などに欠かせな い。小中学生も通学に利用する。駅前には、存続を訴える蒸気機関 車の模型を置き、強い思いを示す。自主的に駅舎の清掃や雪かき、 植栽も続けている。

 日本の棚田百選「井仁の棚田」は、田之尻駅と筒賀駅の中間の山 あいにある。両駅間約八キロはほぼ一本の道でつながる。「人気の 棚田の入り口としても駅を気楽に利用してもらえれば」。駅前に住 む田之尻地区長の伊賀昭造さん(74)は言う。

 昔は児童が遠足で登ったという棚田への山道。かかしの見送りを 受け、小川沿いを進むと、水を張った棚田の景観が突然開ける。棚 田を見ながら弁当を広げるのもいい。

 筒賀駅への下り、十方山(一、三一八メートル)の山並みが目を 潤す。汗を洗い流してくれるふもとの温泉が、山歩きの何よりのご 褒美である。


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