可部駅を出発した下り列車の車窓風景は、河戸駅を出ると一変す
る。住宅街を抜けるや、大きな弧を描く太田川が目に飛び込んでく
る。左岸のレンガ造りの建物が視界に入った瞬間、列車は今井田駅
に向け、トンネルに滑り込んでいく。
建物は太田川漁協の事務所になっている。もともとは一九一二年
に建てられた「亀山発電所」。七三年の閉鎖後、漁協が譲り受け
た。趣のある建物に六月、ギャラリーが開設された。太田川に生息
する淡水魚などの写真パネル七十枚やアユの釣り舟を展示する。水
力発電機も一基残っている。
「川に触れるきっかけになれば。まず子どもに見せてやりたい」
と漁協事務局長の谷口勝彦さん(55)。申し込みがあれば説明役も務
める。目の前の河原や養魚場も案内する。一帯はちょっとした「川
の博物館」である。
団体見学のほか、通りがかりの家族連れらも立ち寄る。川遊びに
はしゃぐ子どもの姿に、谷口さんは「自分がそうだったように子ど
もは川が好きなんだと再認識した」。
可部駅前で五月にあった可部線応援イベントに漁協はパネル展示
で協力した。「車窓からの眺めは、川の眺め」。川と鉄路、上下流
域をつなぐ二つの流れを大切にしたいという思いからだ。