JR西日本が可部線の可部(広島市安佐北区)―三段峡(戸河内 町)間の来年十一月末での廃止を打ち出したことで、にわかに浮上 してきたのが「第三セクター」による存続案である。JRが直営で 列車を走らせない構えである以上、鉄路として残すほぼ唯一の方法 と考えられるからだ。しかし、地元は財政負担を強いられ、経営難 の見通しに実現可能性は「1%」との声も。三セクと言っても運営 形態はさまざまで、沿線自治体間の論議もこれからだ。果たしてレ ールは残るのか。 (可部線存続問題取材班)
■地元に重い財政負担 ―沿線ぐるみ議論不可欠
「最後の1%でも可能性を探る」。JRから廃止通告を受けた二 十七日、沿線五市町村でつくる可部線対策協議会会長の秋葉忠利広 島市長は鉄路の存続にかける決意をそう表現した。「1%」の言葉 は逆に、三セク化する難しさも意味する。 対策協によると、三セクによる運営形態はさまざま。路線の所有 ・管理と列車の運行をすべて三セクが担うのが最も分かりやすい が、そのほかにも、路線の所有・管理は自治体が受け持ち列車の運 行だけ三セクという「公設民営」方式や、路線管理が三セクで列車 の運行は私鉄に委託という「半公設民営」とも呼べる方式などがあ る。 対策協は、より現実的で財政負担が少ない方策を見極める考え。 しかし、JRから人件費や路線の補修、列車のメンテナンス費など 運営に関する情報が乏しく、三セク化による収支も、自治体の財政 負担額も、見通しはまだ、いずれも白紙で手探りの状態だ。 このため、「鉄路存続に向け全力を尽くす」と言葉をそろえる沿 線自治体も、地元負担の議論となると表情が曇る。ある町長は「財 政状況が非常に厳しい中、議会や住民にどこまで理解してもらえる か…」と不安を隠さない。 しかも、全国の三セク「先進例」の多くは経営難にあえぐ。国土 交通省鉄道局がまとめた二〇〇〇年度の第三セクター鉄道の経営状 態は、全国三十八社(当時)のうち赤字は約八割の三十一社。 また、JRが一九九八年に作成し、対策協に示した資料による と、可部線の廃止区間と同じ非電化で単一路線を営む三セクは全国 で二十二社あり、年間収支は平均約四億円の赤字。一方、可部―三 段峡間の年間赤字は約六億円。「JRというプロが運営してもだめ だった路線がうまくいくはずがない」との論議はここから出てくる が、沿線地域には「JRの経営努力が足りなかった」という不満も くすぶる。 「鉄道として残すか、同額を周辺の道路整備などにつぎ込むか、 冷静に考えるべきだ」とJR幹部は冷ややか。一方、バス路線に転 換すれば、赤字は年間一億円で済むとの試算もある。 県交通対策室の小田哲生室長は「なぜ鉄道が必要かという点も考 え、納税者の理解を得るためには負担に一定の限度が必要」と話 す。 中国運輸局鉄道部の杉谷太久美監理課長も「地域おこしや鉄道必 要論の議論だけでなく、だれの責任で(鉄道を)維持するのか、き ちんと整理すべきだ」と、沿線ぐるみの議論を求める。 一方、存続運動に理解を示してきた亀井郁夫参院議員は「JRの 退職者を採用したり、沿線住民が路線維持のため総出でツルハシを 握れば、経営は成り立つはずだ」と強調する。経営安定のため、廃 止区間だけでなく可部線の横川―可部間も同時に三セク化すればい い、とも主張する。 バス路線に転換するにしても、ルート決定やバス停設置、道路拡 幅などを考えれば準備期間は一年間は必要と言われる。議論に残さ れた期間は、あと半年しかない。 (2002.5.29)
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