錦町と岩国市を結ぶ中国地方初の第三セクター鉄道「錦川鉄道」。赤字ローカル線だったJR岩日線が、沿線住民の熱意で「錦川清流線」として再出発し七月、十五周年を迎えた。利用者の減少が続くなど取り巻く状況は厳しい。一方で、高齢者や学生の交通機関として「地域鉄道」の役割は増しつつある。錦川の流れのように、清流線が走り続けるための課題を探った。(伊藤一亘)


 3.経営努力  
人件費減へ1人何役も −運賃アップも視野に

 錦川鉄道が、錦町から運行を受託する町営バスが山あいを走る。「バスは、いろんな人との出会いがあって楽しい」と、ハンドルを握る三浦智雄さん(36)が笑った。本来は駅員で、切符販売など駅業務が主な仕事。「いずれは列車の運転士にも挑戦したい」という。

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バスのハンドルを握る三浦さん。駅員や車掌も務め、一人三役をこなす

 一人が何役もこなす「兼掌業務化」を、錦川鉄道は進める。三浦さんは駅員とバスの運転手をこなし、時には車掌として列車へ乗り込む。七月は、二十一日間の勤務のうち駅の業務が十一日、バス運転手が八日、車掌が二日だった。

 開業以来、赤字経営が続く。経営健全化に向け、経費節減は欠かせない。中でも兼掌業務は、人件費抑制に大きな効果を挙げている。

 錦川鉄道の社員数は現在三十人。一九九三年四月からスタートした旅行業部門の「清流線トラベルサービス」をはじめ、売店や町営バスの受託、保険代理店など、経営を多角化させた。業務の拡大にもかかわらず、開業当初の二十八人とほとんど変わらない。

 努力は実り、鉄道事業経費は開業二年目の八八年度に約二億一千万円だったのが、昨年度は約一億四千万円まで削減された。

 広がる関連業務は一方で、減少する鉄道収入を補う「副業」として重要性を増す。昨年度の全事業収入約一億九千万円のうち、関連業務の収入は約七千万円で、約37%を占める。鉄道事業収入が八八年度の約60%に落ち込みながら、全事業収入が約90%の水準を維持しているのは副業ゆえだ。

 関連業務にはもう一つ、沿線住民との接点を増やす役割がある。中野佳明専務(67)は言う。「『乗って残す』が鉄道の基本。しかし、利用機会の少ない住民には、旅行の申し込みや売店での買い物などで、間接的に鉄道を支援してもらえる」

 二〇〇〇年度の実績をキロ当たりで比較したデータがある。錦川鉄道の修繕費を除いた経費は、全国に三十七ある第三セクター鉄道の中で最も少ない。一方で、収入は三十四番目の低さ。経費をぎりぎりまで切り詰めても、収入効率が悪いため、なお赤字が出る厳しい状況が続く。

 「今後も経費節減に努めるが、運賃アップも視野に入れざるを得なくなってきた」と中野専務。錦川鉄道の運賃は九七年四月、消費税アップ分の2%を上乗せした。開業以来初めての本格的な値上げの検討。経営努力だけでは、そう先延ばしにはできない。

2002.8.8

「地域鉄道の行方 錦川清流線15周年」


 


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