錦町と岩国市を結ぶ中国地方初の第三セクター鉄道「錦川鉄道」。赤字ローカル線だったJR岩日線が、沿線住民の熱意で「錦川清流線」として再出発し七月、十五周年を迎えた。利用者の減少が続くなど取り巻く状況は厳しい。一方で、高齢者や学生の交通機関として「地域鉄道」の役割は増しつつある。錦川の流れのように、清流線が走り続けるための課題を探った。(伊藤一亘)


 5.マイレール  
守り育てる意識を再び −役割増「乗って残そう」

 マイレール商品券―。「錦町錦川清流線を育てる会」の堀江泰会長(47)は六月下旬の総会で、錦川鉄道を支援する新たなアイデアを披露した。切符の購入専用で、「利用促進に直接つながり、購入を通じて誰もが清流線を支える活動に参加できる」と、強調した。

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利用者が減る一方、地域鉄道としての役割が増す錦川清流線

 岩日線存続運動を引き継ぎ、集客イベントなどを手掛ける育てる会。これまでも利用促進策の一環として、住民の回数券購入に代金の一割を補助してきた。だが、使用期限は三カ月。列車に乗る機会が少ない住民は、利用しにくかった。

 マイレール商品券は使用期限を一年間に設定。「期限の長い回数券」の役割を持たせ、購入や利用者増を狙う。錦川鉄道が発行し、回数券同様に会が補助。今月中の発売を目指す。

 「清流線をみんなで育てる意識を高めたい」と堀江会長は言う。背景には、第三セクター鉄道として再出発させた地域の熱意が、この十五年間で冷めてきた現実がある。

 「『釣った魚にえさはいらない』というわけではないでしょうが…」と、当時の町長だった原田博さん(70)。町職員のころから存続運動に携わり、住民の情熱を肌で知る。「鉄道存続を町づくりと結びつけ、熱意が高まった。冷え切る前に、清流線に住民の目を向けないと」と訴える。

 錦川鉄道の昨年度の利用者数は、開業二年目の一九八八年度に比べ二割余り減った。鉄道収入の減少は四割に達する。収入の落ち込みの方が大きい現状は、清流線の性格の変化を表している。

 「利益率が低い通学定期の利用者増加と、一般利用者の乗車の短区間化。つまり、生徒や学生と、短い距離でも列車を使わざるを得ない高齢者の割合が高くなった」と錦川鉄道の中野佳明専務(67)が説明する。車を持たない人にとって欠かせない、地域鉄道化が進んでいる。

 錦町駅の車内で発車を待っていた同町深川の光永重子さん(71)は、岩国市への買い物などで月に数回利用する。「車も運転するけど、この年で岩国まで行くのは怖い。終点まで安全に運んでもらえる列車の方が安心」と笑った。

 利用者減の裏側で、地域鉄道としての役割は増す。沿線の過疎高齢化が一段と進む中で、自分たちの鉄道を守り育てるマイレール意識をどう高め、継承していくか。岩日線存続運動時代からの合言葉は、今も色あせていない。「乗って残そう」

おわり

2002.8.10

「地域鉄道の行方 錦川清流線15周年」


 


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