中国新聞
2002.11.28

小説の魅力「後輩」へ発信/社会問題への洞察 創作の源

 先月末、福山市の高取中であった、ふくやま文学館とインターネ ットで結んだ遠隔授業。文学館からの中継で、島田荘司は「日本を 代表する推理小説家。学区内の出身でロサンゼルス在住」と紹介さ れた。
 「ミステリーは難しくない。日々の生活から不思議を見つけるこ と」とのメッセージを、ホームページで届けた島田。その十日前、 優れた日本小説を翻訳し世界に紹介する文化庁の「輸出」小説に、 「占星術殺人事件」が選ばれた。夏目漱石の「坊ちゃん」など明治 から現代までの二十六作品と並んでだった。

「びんご人国記 ふるさと応援団」

ミステリー作家
島田 荘司さん
(54)

 論理的な謎解きやトリック、名探偵の活躍を柱にした本格ミステリ ーは減った。そんな時代に、第一人者の島田は「魔神の遊戯」を手 がけた

Photo「島田荘司」
  しまだ・そうじ
48年
福山市地吹町で生まれる
55年
霞小学校に入学。4年で東京に転校。中1で再び福山に
67年
福山誠之館高を卒業後、武蔵野美術大学に入学
80年
「占星術殺人事件」を江戸川乱歩賞に応募
93年
ロサンゼルスに移住
94年
死刑問題を扱った「秋好事件」刊行

 ホラー、怪談、犯罪小説を含めて、不思議や神秘を書くのがミス テリー。「本格」は、推理が論理的で、要するに理屈っぽい小説だ が、今回の作品では、脳の科学に加えて、気になっている宗教問題 も取り上げた。旧約聖書の荒ぶる神であるヤハウェを「魔神」に例 えたりしてね。

 実家は、配線工事を請け負う会社だった

 ちょうど大学に入るころ、インテリアデザインに手を伸ばそうと していた。「将来は継ぐのかな」との思いで、商業デザイン学科に 進んだ。でも、なかなかなじまず、もっと創造的な仕事をと思っ た。イラストや雑文などで、暮らしていた。

 地元・福山での最大の出来事は、弟の死だったという

 教育実習で、母校に帰っていた時、五歳違いの弟が交通事故に遭 った。弟とはビートルズの演奏など思い出いっぱい。外国の友人と 文通をしていた弟は、アルバムになる前の新曲をテープで聴いたり していた。その後、人前で演奏の経験さえない私が、レコードを出 せたのは、弟の「遺恨試合」だったからかも。

 次々に、本格ミステリーを出す中、島田は突然、ロスに移住した

 車が大好きで、パリ・ダカールラリーに参加したぐらい。車も 三、四台持っていた。向こうでは筆記さえ通れば、すぐに仮免がも らえ運転練習もできた。そんな自由な運転のとりこになってね。フ ァクスがあれば、原稿書きの仕事にも支障なかったし。今は、賞の 審査員として年に三回程度帰るだけ。でも、「十四キロ」の表 示を見ると、福山駅から鞆までの距離と思ってしまう。

 ふくやま文学館には、島田の直筆原稿など十六点が陳列されている

 ピンときませんね。井伏鱒二さんの資料館と聞いていたから。で も、ファンの方からサイトで、その様子が送られてきたりする。例 えば、文学館にミステリーの部屋とかができれば、ミステリー教室 に出かけてもいいと思っているのですが…。

 一年前、文学館の隣のふくやま美術館であった「ライトフェスタ」 で、「自殺者の王国」のメッセージを送った

 年間三万人の自殺は異常だと思いませんか。交通事故でも年間一 万人なのに。自殺者を増やさないためには、リストラが直撃する四 十歳に職を与えること。だが、これは傷口に軟こうを塗っているよ うなもの。日本的なモノの考え方そのものを改善する必要がある。

 えん罪事件、死刑廃止運動…。社会問題への興味は尽きない。と りわけえん罪事件は、鑑定にお金がかかるため、救済が進まない。 えん罪救済のNPOもつくるべきではないだろうか。

(文中敬称略)
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