中国新聞
2002.12.13

いつも「観客に元気を」/演劇文化の浸透、地元で実感

 高校を中退して宝塚音楽学校に飛び込んだ。幼少から磨いてきた ダンスの技を持ち味に、総勢三百人のタカラジェンヌの中で頭角を 現す。ニューヨーク、ロンドンと二度の海外公演にも参加。一九九 七年に星組トップ娘役に抜てきされた星奈優里は、同組トップスタ ーの麻路さき、稔幸とともにステージに欠かせぬ存在となった。
 「観客に喜んでもらいたい」「元気になってほしい」。演技に込 める思いは、福山時代のバレエ初公演から不変だ。昨年の退団後、 女優に転身した星奈。これからは、どんな人生を演じるのだろう か。

「びんご人国記 ふるさと応援団」

宝塚歌劇団トップ娘役
星奈 優里さん
(31)

 四年間、星組トップ娘役として、多くの舞台で中心的な役割を演じ てきた。売り物の「ベルサイユのばら」では、マリー・アントワネ ット役も務めたスターだ

Photo「星奈優里」
  ほしな・ゆり
71年
福山市多治米町に生まれる
88年
暁の星女子高を中退し、宝塚音楽学校に入学
90年
初舞台
97年
雪組から古巣の星組に戻り、トップ娘役に
01年
宝塚歌劇団を退団
02年
女優業スタート。NHK「はんなり菊太郎」などに出演

 高校一年の夏休みに、東京であったクラシックバレエの練習会 が、宝塚入りのきっかけになった。初の上京で、福山ではできない 劇場巡りを楽しんだ。その中で、宝塚の舞台が特別なものに映っ た。踊りも歌も華やかで、夢の中にいるような感覚。「入団した い」との思いが膨らみ、隣席で見ていた母と語り合った。

 翌春、すぐに宝塚音楽学校を受験。合格発表日に、高校を辞め た。学校の先生には驚かれたけど、とにかく、夢の舞台に飛び込み たかった。

 印象深い公演の一つに、二〇〇〇年の福山公演を挙げる

 地方公演名物のご当地出身者の紹介で、私の時に大きな拍手をも らい、すごくうれしかった。来てくれた家族や知人も大喜び。みな さんにも喜んでもらえたと思った。公演先を決めるのに、出身者の 有無は考慮されない。地元公演はとても幸運なめぐり合わせによる 大切な思い出だ。

 華麗なダンスで人気を集めた。昨秋の退団公演では、三十席の当日 券を求めて、千百人が会場に殺到している

 ダンスのレッスンを始めたのは、三歳の時。普段の生活では体験 できない、発表会の華やいだ雰囲気が好きだった。初舞台は、旧福 山市民会館。ひんやりとして、ほこりっぽい楽屋独特のにおいが、 忘れられない。いまでも、初めての劇場で同じにおいを感じると気 が引き締まる。

 退団後は女優として、舞台やテレビ時代劇に相次いで出演している

 宝塚とは異なるタイプの女優さんと共演して、演技の幅を広げた いと思うようになった。これまでは、夢の世界を題材にしてきた。 いま演じている、普通の生活や人となりは、見る人に面白いと思わ せるのが、また難しい。芝居か現実か分からないくらいの演技力を 身に付けないといけない。

 星奈優里は最近、福山での演劇文化の変化を感じ始めている

 素晴らしい音響効果を持つリーデンローズの開館の影響が大き い。私はバレエの公演を見るために、広島や大阪まで通っていた。 リーデンローズなら、首都圏の劇団を呼べる。私の福山の友人たち も、リーデンローズでの公演を目標にオペラの活動を始めた。

 福山のお気に入りは、穏やかな雰囲気だ

 結構、地元には帰っている。京都での撮影後、東京に戻る予定を 変えて、いきなり実家に帰ったりもした。のんびりした人が多く て、落ち着くのかな。欲を言えば、文化面でもっと積極性がほし い。市民劇団が、積極的に活動している地域は、プロの劇団も無視 できないものです。

(文中敬称略)
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