
7000人で埋まった会場を満たしていたのは、感動や熱気より、同 時代を共に生きている「幸福」感だと思う。浜田省吾が故郷・広島 で飾った、4年越しのツアーの最終ステージ。一つひとつの歌に、 聴衆が自分の思い出や生き方を再確認する、そんな空間だった。 (2001年12月29日、広島グリーンアリーナ)
1998年4月、埼玉でスタートした「ON THE ROA D」ツアー。世紀を超え、全国の100会場余りを巡った壮大な旅は、 広島での3日間の公演でついに幕を閉じる。最終に当たるこの日 は、浜田の49歳の誕生日でもあった。 黒のTシャツにジーンズ姿。ひたむきな人格を結晶させたような 歌声。デビューから26年目の2001年に発表した「青空」か ら歌い始めた浜田は、変わらず、古びず、年齢を超越した存在とし てステージにいた。 圧巻は、叙情的なコーラスで「彼女」を聴かせた後、力感みなぎ る「A NEW STYLE WAR」になだれ込んだ転換の妙。 この落差を違和感なく越える技量は、驚きというほかはない。その 声量も、ピアノや弦楽アンサンブルまで従えた重厚な演奏に、一度 として埋没しなかった。 客席には3、40代のカップルが多い。思い出のアルバムをめく るように、あるいは、見失いかけた生き方の指針を探すように、浜 田の歌に身をゆだねる。テレビ番組やCMとタイアップし、すぐに 忘れ去られる最近のヒット曲に比べ、何と幸せな歌のあり方だろ う。 アンコール。客席中央のサブステージに軽々と跳び乗って、デビ ュー曲「路地裏の少年」を歌う浜田がいた。再度のアンコール。メ ーンステージに戻り、名曲「ミッドナイト・ブルートレイン」を歌 う浜田がいた。開演から4時間が過ぎていた。 (道面雅量) |