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第3部 模索

【2】リアル書店 ネットに対抗 街の文化拠点 '08/4/29

 ▽本との遊び空間演出

 「リアル書店」という言葉をご存じだろうか。大仰だが、実は普通の本屋さんのこと。インターネット上で勢いを増す「ネット書店」と対比した出版界の用語だ。わざわざそんな言葉が使われるほど「リアル書店」は追い込まれている。

 逆風の中で、独特の品ぞろえで全国から注目される書店が鳥取市にある。人文系書籍を中心に扱う「定有堂書店」だ。

 予期せぬ出合い

 JR鳥取駅近くの商店街にたたずむ五十坪ほどの店構え。「愉(たの)しい暮らし」「現代思想の冒険」などと分類された書棚に、単行本や新書、文庫が混然と並ぶ。「探しにくい」という客もいるが、実はそれが狙いだ。

 「ネットは目的の本をすぐ買えるが、逆に思いがけず別の本に出合う寄り道がない」と店主の奈良敏行さん(59)。「街の本屋は、どれだけ本と遊べるかが勝負。時間をかけて選んでほしい。そんな無駄から生まれてくるのが文化じゃないかな」

 背景には、小さな書店の「受難」がある。一九八〇年の開店当時は順調だった経営も、大型店が郊外進出し始めた九〇年代には暗転。開店当初、長さ一・五キロの商店街に二十五店あった書店は今、たった四店だ。

 鳥取だけの話ではない。日本中で小さな書店はあえぐ。経済産業省によると、全国の書店数は約一万七千店(二〇〇七年)で、十年前に比べ32%目減り。しかし店舗面積の合計は19%増だ。効率経営の大型店が取って代わる現実を裏付ける。

 「総花的な商品構成はやめよう。客足は伸びなくても、本当に本好きの人がやってくる場に」。方針を転換し、雑誌や学習参考書を減らした。扱い冊数は開店当時の半分の一万冊。客層が限られ売り上げが減る分、リピーターを増やして客単価を上げる戦略だ。

 勤め帰りの市内の女性会社員(30)は「新たな本を発見できる本屋さん。最近のヒットは、特集コーナーで哲学者の内田樹(たつる)さんを知ったこと」。反応は上々だ。「自分が面白いと思った本を仕入れてる。売れないなら私が悪い」と言い切る奈良さん。客が喜ぶ本を探し当てる、そんな嗅覚(きゅうかく)が問われてもいる。

 本が売れない時代だからこそ生まれた今の店。在庫を持たぬよう、丁寧に書籍を仕入れる身の丈の経営は、わずかではあるが黒字を続ける。東京などの出版社や書店から月に数件の見学がある。

 大型店も危機感

 出版不況が言われて久しい。書籍、雑誌の販売額は約二兆千五百億円(〇七年)と十年間で13%減。一方、中国新聞社の読書世論調査では、回答者の一割が書籍のネット購入を体験。大型とはいえど、リアル書店はなべて危機感を募らせる。

 「お客の取り合い、つぶし合い。厳しいですよ」。神戸市を本社に二十八店を全国展開するジュンク堂書店広島店(広島市南区)の高原博臣店長(45)は率直に明かす。

 七十五万冊の品ぞろえで九九年に開店。順調な売り上げは、近くに新たな大型店が進出すると陰りを見せ始めた。高原店長は「お客の流動化は全国的な傾向。採算が合わなければ、もちろん大型店も閉店ですよ」

 スケールメリットを重視するあまり、特色を出しにくい大型店。それでも同店は専門書の豊富さをセールスポイントとし、落ち着いて選んでもらうために、いす、机を置く。生き残りをかけ、工夫とせめぎ合いの日々は続く。(岩崎秀史)

【写真説明】単行本に新書や文庫を交ぜた、独特の棚づくりの定有堂書店。奈良店主(右から2人目)が行き着いた「街の本屋」のスタイルだ

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