中国新聞社
第 1 部  マ イ ラ イ フ
2002.1.16
中国山地
ネットの駅長  夢の発着点 恋愛も運ぶ 

 おとそ気分の残る四日、島根県桜江町のひと足早い成人式で、河部真弓さん(44)は祝い太鼓のばちを振った。山陰で初めて、二年前に発信を始めたインターネット版タウン誌の編集長。「太鼓は息が合うと仲間になれた感じ。スカッとするし、田舎体験ツアーに使えそう」とほほ笑む。

 三年前まで東京・渋谷住まい。帰郷を望む夫、安男さん(40)が桜江町の三セク温泉リゾート「風の国」に就職し、一緒に引っ越した。「インターネットのおかげで、私の中で、地球ってちっちゃいんです。桜江も渋谷の隣町に来た感覚」

「大きくなって地域に帰れ」との思いで、新成人にはなむけの太鼓を打つ河部さん(中央)

 転居後、地縁づくりのつもりで、自宅前にある無人駅の店舗化を町役場に提案。その行動が、ネット事業で経営の多角化を狙う地元の建設会社役員の目に留まった。

 ネット画面は毎月、更新する。編集スタッフの女性二人と、石見地方の観光地の穴場や田舎暮らしの達人、民話、空き家などの地域資源を掘り起こす傍ら、量販店に出回らないうまいものを探す。日本海のボべ貝、江の川のツガニ…。地元のアユ漁師は「川のチーズみたいな」子うるかを出してくれた。

 今一番の注目株は、ネット公募の田舎体験ツアー。特産の桑茶尽くしのダイエット合宿、森林浴がてらの林間パソコン講座、神楽舞特訓など、奇抜な着想と住民交流を重視したメニューは好評だ。「よそ者」「女性」を安易に寄せつけない神楽社中も多い中、受け入れ先を切り開いた。

 苦労は実を結ぶ。昨年九月、千葉の女性が石見神楽を習った地元青年と結ばれ、Iターン。十一月には、ツアー参加が縁で出会った二十代の東京の男性と兵庫の女性が一緒に越してきた。「ドラマですよね。若さってすごい」と河部さん。

 東京時代は、出店戦略などを練るマーケティングプランナー。転居後も毎月上京し、仕事を続けているが最近は編集業務に追われ、「桜江べったり」になった。

 建設会社のビルに間借りしている編集室を、あの無人駅舎に移す交渉を進めている。「インターネットは過疎地を世界につなぐ線路。その力で人やモノが行き交う駅のにぎわいを取り戻したい」

 年始に会った佐々木節也町長(68)は「出過ぎたくいになれ」と励ましてくれた。


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