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2002.3.30

標本箱からコノハチョウの標本を取り出し、羽の裏を見た女児が「あっ」と声をあげた。「枯れ葉そっくりだ」
羽を休めた姿が木の葉に似ていることからその名が付いたコノハチョウ。だが、ガラスケースに入った展示標本では、こうした特徴がつかめない。羽の裏側まで観察できないからだ。
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| 羽はこう広げて。鳥のはく製作りに挑戦する小学生(2001年11月、比和町立自然科学科学博物館)=関元教諭提供 |
参加・体験型展示手法をさす「ハンズ・オン」。十年前、その手法を取り入れた広島県比和町の町立自然科学博物館を訪れた、隣町の高野町新市小の一年生八人は、じかに標本に触れた感動を素直に表した。
運営と指導にかかわるのは県北の理科教師のOB、現役たちでつくる比婆科学教育振興会。事務局長の中村慎吾さん(71)は言う。「アメリカのスミソニアン博物館では、標本を入館者が自由に取り出して触れる部屋もある。日本の博物館は展示さえしておけば、という考えが強いから楽しくないんです」
県内唯一の自然史系博物館。人口二千の小さな町に、半世紀の長い歴史がある。標本数はほ乳類、鳥類、昆虫類を中心に約二十万点。「モグラ博物館」の愛称通り、モグラの仲間は約四千点を数える。
博物館は今、これまで以上に学校、地域との連携に力を入れ始めている。新年度から本格的に始まる「総合的な学習」に向けて学校の授業や生涯学習の場に、もっと活用できないかというわけだ。
その答えを探す試みが文部科学省から委嘱された「親しむ博物館づくり事業」である。振興会などの協力で二〇〇〇年度から二年間で十二のプロジェクトを試した。
昨年は博物館で鳥類の標本作りをした。比和町内の小学四〜六年生十人がカワセミ、トビ、アオゲラ、ヤマドリなどを材料に延べ三日間、振興会会員の小川光昭さん(68)の指導を受け、一人二羽のはく製を仕上げた。
材料は町民が博物館に持ち込み、冷凍保存している落鳥。担当した関元生人・古頃小教諭(44)は「指導者がいて、博物館という施設があれば、難しいはく製作りが小学生でもできることを実証した」と振り返る。
高野町の下高野山小は二〇〇一年度の総合的学習で、三・四年生九人が「インセクト調査隊」と名づけてハチについて学習。校区内で採集したハチの標本を作り、博物館の標本も加えて、ハチの種類がどれだけいるかなど調べた。中村さんたちを講師にハチの解剖も体験した。
担任の大田由美教諭(39)は「実物に触れる楽しさが『ハチの体の中はどうなっているのだろう』と学習意欲を高めることにつながったようですね」と手ごたえを感じている。
「子どものころの自然体験や遊びは人格形成に大きくかかわります」と中村さん。「知的遊び場」としての博物館の役割はますます重要になると感じている。

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