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2002.3.29

高梁川をカヌーで下る冒険旅行を源流の岡山県大佐町役場ふれあい事業推進室(現・源流振興室)が始めたのは五年前。当時課長補佐だった藤沢正則さん(48)が発案者だった。
町内に注ぐ支流の小阪部川から、河口の倉敷市まで約百四十キロ。かつては高瀬舟が炭や丸太を積み、行き来した。「日本中で高梁川の舟だけが海までこぎ出し、四国へ金毘羅参りに渡ったそうです」。その航跡をたどる旅は、子どもたちに贈る歴史ロマンでもあった。
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| 源流部の岡山県大佐町から船出市、高梁川をゴムボートで下る小学生たち |
使うのは十人乗りのカヌー二隻。コース取りのため初めて下ると、障壁が次々現れた。ダムだけで三つ。随所にモクズガニや魚を捕る網や仕掛けがある。水温が高く、川下り向きの夏休みはアユの漁期で入りにくい。「人間のために造ったもんが皆、邪魔になった」
結局、出発は春休みに。まるごと一本の川下りもかなわず、トラックでの陸送を挟む六区間、計二四・六キロをこぐ、つぎはぎコースになった。流域四つの警察署に計画を説き、どこで水難に遭っても搬送できるように病院も調べ上げた。
一泊二日の川下り「子どもたちが行く冒険アースボートの旅」はもう六年目。この春休みも船出した。大佐町と下流の倉敷市、清音村で募った小学生たち男女二十二人が挑んだ。今回はゴムボートも加え、三隻に分乗。瀬にもまれ、雪解け水をかぶる。暗く、不気味な洞くつをくぐる。子どもたちは歓声を上げながら、懸命に波をかいた。
乗り手を子どもだけに絞ったのは二年目から。河原に張るテントも、児童が組み立てる。「遊びは自己責任」を伝えるためだ。
実は一年目の出発前、家庭の理解で学校ぐるみの参加を決めた小学校に校長仲間から横やりが入った。「子どもには無理、危ねえぞ」「事故でも起きりゃあ責任問題」。気後れし、相談にきた校長を町教委は「要らん心配」と追い返した。
当時、教育次長だった源流振興室の杉本堅室長(52)は振り返る。「準備の徹底ぶりを知っとったし、石橋をたたくだけで渡ろうとせん校長の話を聞いとっちゃあ、冒険なんかハナから無理でしょ」
大佐町職員はベストにチノパンツ、開襟シャツが制服だ。「行政は住民と向き合うのが仕事。野に出て、現場の風を感じよう」と二〇〇〇年夏、背広やスカートをやめた。提唱した梅田和男町長自ら、ベスト姿で動き回る。現場主義にこだわる町だから、冒険学習にも寛容だった。
「今まで一番危ないと思った経験は?」と、川下り出発前の児童に聞いてみた。「車にひかれかけた」「畳で転び指を骨折」「サッカーでねんざ」。自然体験での危険を挙げる子はなかなか出ない。「海水浴でおぼれた」という一人だけだった。
日焼けし、手や足の皮がむけた二日間。冒険心も一皮むけたようだ。
 
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